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魂の7番勝負の第6局についての記事です。
若手棋士とトップ棋士の団体戦、AbemaTV「魂の7番勝負」が第六局まで放送されました。
若手側が5連勝という状況で昨日、第六局の、増田康宏四段と三浦弘行九段の対局が放送されました。
結果は、増田四段の快勝となりました。
この結果、魂の7番勝負は若手の六連勝となりました。
今回はこの将棋を振り返りますが、長くなりそうなので、「戦型」について書きます。
目次(もくじ)
今回の第六局の印象ですが、かなり見ごたえのある将棋の内容でした^^
実際、(あくまで私個人の印象ですが)解説陣も将棋以外の話をしている余裕が
なかった感じでした。
つまり、それだけシビアな将棋だったということです。
私が観た場面がたまたまそうだったのかもしれませんが(笑)、ともかく、
この第六局に関しては、将棋の内容に注目するのが吉、という気がします。
ですので、いつも将棋以外の内容を楽しんでくださっている方はご了承ください(_ _)
(将棋の内容といっても今回もごく表面的な話しかしませんが。。。)
増田四段は「雁木囲い」をよく使います。
「雁木」は「がんぎ」と読みます。
(漫画「ハチワンダイバー」でも出てきましたね。)
藤井四段との竜王戦本戦トーナメントでも使っていましたね。
今回の第六局では増田先生が先手番で、三浦先生が後手番でした。
先手番となった増田四段は雁木を採用しました。
感想戦での両者のコメントから、雁木が本局の主要なテーマであったようです。
雁木は、最近のタイトル戦にも登場しました。
この前の竜王戦第二局では、後手番の羽生先生が雁木に囲い、渡辺先生は矢倉に組みました。
羽生先生が増田四段を意識して雁木を採用したのかは分かりません。
ともあれ、羽生先生が使うくらいだから、雁木は優秀な戦法であることは間違いなさそうです。
感想戦のコメントの感じから、両対局者は今回の対局の戦型が雁木になることを望んでいた、
少なくとも想定内であったようです。
炎の7番勝負や魂の7番勝負のこれまでの感じから、対局直後のインタビューで、対局に負けた
先輩棋士は、将棋の流れや反省点を語ることが多かったように思います。
本局の三浦先生のコメントはそれとは一味違った印象です。
コメントは、雁木についてのもので、
「攻めていったものの、距離感が分からなかった」という、専門的な感想でした。
自分にとって新鮮な戦法に対して、好奇心をもって挑戦していこうとする姿勢、そして負けて
落ち込む暇もなく将棋を探求していこうとする姿勢をもつ三浦先生は、素晴らしい棋士です。
三浦先生には、「将棋の虫」というあだ名があったと記憶していますが、まさに今回の三浦先生
をよく表している言葉だと思います。
一方の増田四段の感想にも、「雁木で教えていただけて嬉しかった」というコメントがありました。
観戦している側からすると、中盤や終盤が見ごたえあり過ぎて序盤のことなど忘れてしまうのですが(笑)、
棋士にとってはやはり序盤が大事なのですね。
最近の将棋では、矢倉戦で後手が「左美濃」という囲いを採用することが増えてきました。
「美濃囲い」というのは振り飛車で使われる囲いですが、「左美濃」はそれを左右逆にしたものです。
左美濃は、振り飛車相手に居飛車が持久戦に持ち込むときに使われる囲いでしたが、最近では
相居飛車の将棋で使われるようになっているわけですね。
矢倉対左美濃は盛んに指されていますが、本局では、「雁木対左美濃」という形になりました。
調べてみないと分かりませんが、感想戦での三浦先生の言葉を聞いた感じだと、これは前例がなさそうです。
そしてこの左美濃に「右四間飛車」を組み合わせ、後手の三浦九段は六筋から雁木を攻撃しようとします。
なんとなくですが、第三局の行方-藤井戦と似た将棋になりました。
ただし、行方-藤井戦は矢倉対右四間飛車左美濃でしたが。
雁木囲いというのは、通常は玉を6九の位置にまでもっていくことで完成します。
でも増田先生の雁木は一味違います。
玉を居玉のままにしておき、先に金銀を囲います。
実は私も大会で対戦した相手に教えてもらったことがあるのですが、雁木囲いというのは案外もろいのだそうです。
プロの将棋でほとんど見られなかったことから、従来の雁木戦法というのは、あまり優秀な戦法でなないのかもしれません。
第六局の解説では、囲いの一部である6七地点の銀を5六に出て使っていく手が指摘されていました。
これは、解説者もすぐには見えなかった手で、「5六に出るとしたら右の銀だと決めつけていた」というようなコメントがありました。
このような手が増田四段の読み筋にも含まれていたとすると、増田四段流の現代的な雁木戦法というのは、従来の雁木に比べて柔軟な戦法なのだろうと思います。
本局で実際に登場した手に、居玉の状態にあった玉を、右側(4八地点)にもっていき、いわゆる「右玉」にする手がありました。
結果的に後手の攻めが浅くなり、先手からの反撃が致命的なものとなりました。
この右玉にした手は、三浦先生の局後のコメントにあった「距離感」ともきっと関係があるのでしょう。
それはともかく、形にとらわれずに、柔軟に指すのが、天才と呼ばれる増田四段が愛用する
雁木戦法の真髄なのだと感じました。
以上を要約すると次のような感じです。
先手の雁木に対して左美濃に組んだ後手が右四間飛車で攻めてきて、それに対して先手は右玉にした。
その後の展開については、またの機会にしましょう^^
いかがでしたか?
今回は、魂の7番勝負第六局の序盤について、書いてみました。
自分なりに情報や解釈を盛り込んでみましたので、
今回の記事は強い人にも読んでいただけたら嬉しいですね^^
魂の7番勝負も残すところあと一局となりました。
若手側の完全勝利となるのか、トップ棋士が一矢報いるのか、結果が楽しみです。