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2019年7月14日(日)夜、第2回AbemaTVトーナメントの準決勝、
藤井聡太七段vs木村一基九段戦が放送されました。
結果は、藤井七段が2勝1敗で、勝ちでした。
(注: Abemaトーナメントは3番勝負の形式なのです。)
将棋界のトップ棋士の一人である木村九段に勝ったことで、
藤井七段は将棋の世界で、また一つ大きな結果を残したといえます。
今回のテーマはこの勝利のすごさについてです。
目次(もくじ)
木村九段は、ユーモアがある人で、将棋ファンに愛されるキャラクターです。
その一方で、実力もあり、熱烈に応援しているファンも多数いると思います。
まずはそんな木村先生のすごさについて、少し説明を試みます。
木村一基九段は例の、「羽生世代」に近い世代に属する強い棋士たちの一人です。
順位戦では、将棋界のトップ層である「A級」の在籍が通算5期、
2018年度の第77期B級1組では渡辺明・現三冠に次ぐ成績を挙げ昇級し、
2019年度のA級復帰を決めました。
木村九段は、タイトル戦の登場回数も多いです。
現在、豊島将之王位(名人と王位のニ冠)に挑戦中の第60期王位戦を含め、
計7回もタイトル挑戦しています。
残念ながら獲得はありませんが、獲得まで後一歩と迫ったこともあるので、
まさにトップ棋士と呼ばれるに相応しい方ですね・・・!
その木村九段ですが、最近も公式戦でとても好調のようです。
そのためか、Abemaトーナメントでの、藤井七段戦の一つ前の中村太地七段との対局では、
事前アンケートで、84%が木村九段の勝利を予想していました。
中村太地七段も、王座のタイトルを獲得したこともある強豪若手棋士なのですが、
そんな棋士相手の対局で、84%の人がが勝つと予想したというのはすごいことです。
では最近の木村一基九段は、実際、具体的にどのくらい好調なのでしょうか?
竜王戦では木村一基九段は、1組の「出場者決定戦」で羽生九段に勝ち、
決勝トーナメントに進出しました。
さらに木村九段は、その決勝トーナメントでも、前名人である佐藤天彦九段に勝っています。
また、先ほども話にでてきたように、王位戦では挑戦者になりました。
その挑戦権も、王位リーグの紅組で4勝1敗という好成績を挙げた後、
プレーオフで菅井七段、羽生九段を連破したことで手に入れたもので、とても価値あるものです。
このように、最近の公式棋戦で活躍するくらい、木村九段の将棋は充実していたと考えられます。
木村一基九段といえば、「千駄ヶ谷の受け師」という異名でも有名です。
【関連記事: 魂の7番勝負第七局近藤-木村戦は、千駄ヶ谷の受け師が勝利】
「受け」つまり守りの手で、相手の攻めをしのいできた実績があるからこそのニックネームなのでしょう。
実際、終盤で王将がどんどん前に出ていく展開の将棋を指したりされていますからね。
木村九段の将棋の中には、木村先生の王将、「木村玉(きむらぎょく)」の生命力のすごさが賞賛されるものがあります。
王将の前進に限らず、木村先生の将棋には、独特の「ワールド」があるようです。
確か、前に木村九段が「AbemaTV魂の7番勝負」に出場したときに、お弟子さんである高野智史四段が、
「木村ワールドを感じます」という趣旨の発言をしていました。
プロレスとかもそうですが、「受けて勝つ」のはやはりとても強い人のやることなのでしょう。
最も偉大な将棋棋士の一人である、故・大山十五世名人も、受けの強さで知られていますし。
なので、(ご自分では謙遜されるのですが)受けの得意な木村九段は、とても強い棋士といえます。
羽生九段のコメントから、Abemaトーナメントの木村九段の藤井七段との将棋は、
3局とも「攻める藤井」対「受ける木村」という構図だったようです。
つまり藤井七段は、受けの名手である木村九段に、
3局中2局、攻め勝ったわけで、見事な勝利といえそうです。
解説者をつとめた羽生善治九段も、藤井聡太七段と木村一基九段の勝負に感心していました。
AbemaTVトーナメントというのは、超早指しの(非公式)棋戦です。
チェスで使われる、フィッシャー方式という持ち時間のルールを、
将棋でもやってみたらどうか、というアイディアから提案されたのですが、
そのアイディアを出したのが、羽生善治九段なのでした。
そんな早指し勝負で行われた木村-藤井戦でしたが、
羽生先生のコメントでは、持ち時間の長い棋戦のような濃密な将棋だった、
というように評価されていました。
AbemaTVトーナメント企画の発案者であり、将棋界の第一人者でもある羽生九段に、
そこまで言わせたことから、如何に素晴らしい将棋であったかがうかがえますね。
羽生九段の解説というと、とても手がよくみえるので、
かなり予想が当たるようなイメージを持っていたのですが、
今回の木村-藤井の将棋では、対局者の指し手に驚いて感心している場面もあったようでした。
「色々考えますねー!」という発言が何度か聞かれました。
個人的に、強烈な印象を残したのが、第3局です。
第1局とほぼ同じ形の将棋だったのですが、1点だけ違う点がありました。
ちなみに手番は、どちらも藤井七段が先手でした。
第1局と第3局の違い、それは、「端歩」です。
先手が攻撃を仕掛けるときに、第1局では端歩の「突き捨て」が入っていたのですが、
第3局ではそれが省略されていました。
「端歩を突き捨てなくて得することがあるのかな・・・?」と、
解説の羽生先生も、最初は困惑していました。
しかし、そこはさすがの羽生九段。
少ししてから、藤井七段の考えを理解しました。
狙いに気づいた羽生九段は、何度も「色々考えるものですね!」といいながら感心。
そして、この第3局に関しては、藤井七段の構想がうまくはまり、
あまり長引くことなく、木村九段を投了に追い込みました。
この第3局における藤井聡太七段の何がすごく、何が羽生九段をうならせたのかというと・・・。
それは、第1局の将棋をすぐに修正し、第3局の対局で試したという点です。
新構想を思いつくだけでもすごいことなのに、それをすぐさま実戦に投入してくるというのは、
将棋に対してとても貪欲で探求心ある姿勢といっていいと思います。
前回優勝者でもある藤井七段にとっては、プレッシャーのかかる戦いでもあったでしょうに・・・!
将棋の定跡というのはこうして、藤井七段のような天才によって、
日々進化しているものなのでしょうね。
今回は、AbemaTVトーナメントの準決勝、木村九段vs藤井七段の対局についてでした。
木村一基九段に勝つことのすごさと、羽生善治九段もうなるお二人の対局、
そして、藤井聡太七段の将棋に対する姿勢の素晴らしさについて伝われば幸いです。
今回の藤井七段の勝利は見事なものでしたが、惜しくも敗れた木村九段も、準決勝の舞台に相応しい素晴らしい相手でしたね。
木村九段、藤井七段の今後の公式戦での活躍、木村九段の第3回AbemaTVトーナメントへの再登場に期待感が高まります。