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将棋の順位戦は、名人とフリークラスを除くと、全部で5つのクラスに分けられています。
各組のリーグ戦の戦績次第で、一つ上のクラスに昇級できるのですが、下のクラスに降級してしまうこともあります。
B級2組以下の降級に関する規定では、「降級点」というシステムが採用されています。
この仕組みについて知っておくと、より将棋通的な楽しみ方(?)ができると思いますので、まとめてみたいと思います。
目次(もくじ)
B級1組とA級の降級制度は、その年の成績が一番悪い棋士と二番目に悪い棋士の2名が降級するというわかりやすいものです。
ですが、下のクラス、特にC級2組でこれをやってしまうと、毎年フリークラスへの降級者が出てしまいます。
フリークラスに落ちたら、あと10年での引退を覚悟しなければなりません!
そのため、即降級という厳しすぎる制度ではなく、「降級点」が溜まると降級する、という少し猶予のある制度がとられているのです。
B級2組以下のクラスでは、降級点がその年度の順位戦リーグ成績下位の棋士につきます。
現在は少し規定が変わって数字が変わったクラスもあるのですが、この記事が投稿された時点では、
降級点がついてしまう棋士は、5人に一人、つまり20%の割合でした。
正確にいうと、リーグの参加人数を5で割って、少数点以下は切り捨てです。
例えば、第76期順位戦のC級1組の場合は、リーグ37名の参加者のうち、7名に降級点がつきました。
37割5は7.4なので、小数点を切り捨てて7、というわけです。
第76期順位戦のC級2組では、参加者が50名なので、なんと10名もの降級点者が出てしまいました。
その結果、岡崎洋七段はフリークラス降級が決まってしまいました。
勝ち数規定で七段に昇段したばかりでのフリークラス降級は残念ですが、順位戦復帰を目指す岡崎先生を応援していきたいですね!
降級点は、その名の通り、1点、2点とカウントします。
何点とったら降級となってしまうのでしょうか?
以下の通りです。
降級点がつくとしたら、一年に1点までです。
B2あるいはC1から一つ下のクラスに落ちるには、最短でも2年はかかります。
もし落ちてしまったとしても、フリークラスではなく、C1あるいはC2クラスに落ちるだけです。
一方、C2だけは、降級するとフリークラスに行ってしまうので、さすがに2年では厳しすぎるからとの配慮がなされているのでしょう。
他のクラスの場合よりもさらに1年長い、3年はかかるようになっています。
中尾五段のフリークラスからの順位戦復帰がかかる対局が話題になったとき、以下のような説明がされていたのをおぼえていますか?
もし中尾五段が勝てれば、最大でもあと13年現役でいられる、というものです。
これは、中尾先生がもしC2順位戦に復帰したら、もしまた降級点をとり続けてしまったとしても、フリークラス落ちまでには3年はかかり、さらに落ちた後もフリークラス降級棋士の引退時期は降級してから10年後であるためです。
このように、話題になったニュースの背後にも、降級点の制度があったのでした。
降級点が溜まると降級してしまうのだとすると、リーグに長期いる棋士は確率的に不利なのではないか。
少なくとも、降級点がついたまま長年同じクラスで戦うのは、精神的にきつそうですよね。
幸いなことに将棋界には、「降級点の消滅」に関する制度が存在しています。
もちろん、昇級か降級すれば降級点はリセットとなり、消えます。
ここで説明するのは、それ以外の方法で消滅させる方法、つまり所属クラスが変わらない棋士が降級点を消す方法です。
C級1組とB級2組では、次のような条件を満たすと、降級点を消せます。
「指しわけ」というのは5分5分、つまり勝ち数と負け数が同じことを意味します。
B2以下は順位戦は年間10局なので、5勝5敗ということになりますね。
B2とC1の棋士には降級点は最大でも1点しかついていないので、上記のどちらかの条件によってその1点を消せるというわけです。
C級2組でも降級点消滅の決まりがあります。ただ、ちょっと注意が必要です。
そう、降級点を一つに減らすことはできるのですが、0にはできないのです!
降級点が2点の棋士は、いわば崖っぷちでの戦いを強いられることになります。
そのため、降級点2点の棋士は「フリークラス宣言」をする例もあります。
C級2組で降級点を完全に消滅させることができないという点の他にも、降級点制度には過酷な面があります。
C1やB2の場合、降級点を前の年度でとった棋士は、昇級してきた棋士よりも順位が下になります。
例えば、C級2組からC級1組に昇級した3名の棋士は、前期で降級点をとった棋士よりも上の順位となります。
前期で降級点をとった上に順位的に最下位という、厳しい戦いになってしまうわけですね。
ただし、幸いなことにC級2組ではこの決まりはありません。
棋士デビューした新四段よりは前期の降級点者は順位が上になります。
この順位の差のおかげでフリークラス降級を逃れることもあるのでしょうか?
ただし、フリークラスから上がってきた棋士については前期の降級点者よりも順位が下になります。
昇級して引退の危機を脱したばかりでさっそく過酷な戦いとなるわけですね。もちろん、フリークラスから上がってくる勢いがあれば十分戦える可能性もありますが。
ちなみにフリークラスからの昇級者と新四段との順番は、前者の昇級時期と後者の昇段時期を比べ、早い方が順位が上となります。
【順位戦関係の別記事への案内をまとめました】 => 将棋の順位戦のまとめ記事|名人戦やフリークラスとの関係についても
今回は順位戦の「降級点」の制度について書きました。
降級点は、成績不振な棋士のフリークラス陥落までの期間に多少の猶予を与えてくれる制度ですがそれでも厳しい要素もあります。
そのような点も含めて将棋のプロの世界の大変さを知り、棋士という職業への尊敬がまた深まりました。
それにしても、知っているつもりでも、改めて色々情報を調べてみると発見があるものですね^^
この調子で将棋界の仕組みをもっと理解していき、ひいきの棋士を応援していきたいと思いました。
こんにちは。
とても分かりやすい解説を有難うございました。
もやもやがすっきりしました。