【当サイトの記事はPRを含む場合があります。】
2017年は、藤井聡太四段や加藤一二三九段、さらには羽生善治竜王の活躍で一気に将棋界が注目されました。
今や多くの人々がプロの将棋棋士の世界に関心を持っています。
お子さんが将来棋士になりたがっている、という方もいることでしょう。
そこで気になってくるのが、棋士の収入ですね。
私のようなただの将棋ファンも、(あくまで棋士を応援する立場から)純粋に興味があります。
目次(もくじ)
ランキング形式で、トップ棋士たちの年収は公開されています。
また、インターネットで検索すると、棋士の平均年収がだいたいいくらとされているかもわかります。
平均年収はだいたい700万から800万円と言われています。
しかし同時に、「勝てない棋士は収入が厳しい」ともされています。
お子さんが棋士を目指しそうな方や、応援している棋士がいる将棋ファンにとっては、そんなことを知ってしまっては気が気でないですよね。
年収の最大値とか、平均というのは少し大雑把過ぎるので、できればもう少し詳しく知りたいところです。
棋士の年収について、収入の内訳や仕組みなどの観点から、もっと具体的に知れたら良さそうな気がします。
そこで今回は、棋士の収入源のうち、おもに「対局料」に焦点を当てて、推測してみました。
本題に入る前に、棋士の主な収入源をリストしておきましょう。
棋士は次のような活動によって収入を得ています。
棋戦での対局が棋士の本業ですが、その他の普及活動も大切な棋士の仕事です。
上のリストのうち、「棋戦での対局」以外はどれも普及活動の一環と言って良いでしょう、
普及に関しては、将棋教室をやっている棋士も多くいて、重要な収入源です。
その他、講演会や、芸能活動(テレビ出演など)をしている棋士もいます。
一口にプロ棋士の活動といっても、案外幅が広いのかもしれませんね。
残念なことに、棋士が対局からもらえる金額はほとんど公開されていません。
だからこそ、棋士の収入が気になる人は苦労して調べる必要があるわけですね^^
この記事ではこれから色々推測していきます。
参考にしている情報源は、おもに下記の書籍です。それ以外にも将棋連盟サイトなども参照しています。
まずは対局からの収入にいくつか種類があることをおさえましょう。
対局からの収入の種類は3種類あり、対局料・賞金それに固定給があります。
対局料は勝敗に関わらずもらえます。
賞金は、トーナメントの優勝者や準優勝者など、そしてタイトル戦(の番勝負)の出場棋士がもらえます。
トップ棋士の収入ではなく一般の棋士の収入が気になる場合は、対局料や賞金、そして固定給を知る必要があります。
賞金を得るには相当な活躍をしなければならないので、一部の棋士のみに限定された話になってきます。
この記事では、対局料と固定給を推測します。
タイトル戦では、竜王戦の決勝トーナメントの対局料が公開されています。
また、決勝トーナメントの予選である各組のランキング戦の優勝・準優勝の賞金も公開されています。
それ以外のタイトル戦や一般棋戦は、ほとんどが非公開または優勝賞金などの一部の上位陣のみがもらえる収入(の一部)のみの公開です。
女流棋戦の場合は、青野先生の本には、マイナビ女子オープンのみ、対局料(と勝ち星料)が公開されている、とあります。
フリークラス所属者以外の将棋の棋士ににとって非常に重要な棋戦が、順位戦です。
この順位戦では、対局料という概念が存在しません。
でも別にただで対局をするわけではありません。
ここで、先ほど説明しなかった「固定給」という言葉を思い出して下さい。
棋士たちは対局料に加えて、月ごとに「固定給」をもらっています。
この固定給の大部分は、順位戦の対局に対する報酬なのです。
人によって異なるけれど、だいたい固定給の7割が順位戦からのものだとのことです。
順位戦は、多くのクラスでは一人あたり年間12局未満の対局数です。
つまり、固定給は対局がない月にももらえるわけです。もしも対局が0の月があっても収入が入ってくるように配慮しているのでしょうね。
固定給は順位戦以外の棋戦からも、その棋戦での活躍に応じた額が入ってくるそうです。
青野先生の書籍には、新四段の棋士の収入は、勝率が5割程度であれば社会人2年目くらいであると書かれています。
社会人2年目の収入は、300から400万円くらいであると言われています。
では、棋士になったものの、思うように勝てなかった場合は、どのくらいの収入になるのでしょうか?
インターネットで軽く調べたところによると、フリークラス棋士で年間全敗の場合は、100万円程度とも数十万円程度とも言われています。
あくまでインターネット上の根拠のない情報とはいえ、棋士を目指すご家族がいる場合は、気になってしまいますよね。
そこで知りたいのが、対局料と固定給がどのくらいであるか、です。
これらがわかれば、賞金が中々もらえない場合、収入はどうなるかを予想できます。
棋士の収入を知るのは、非公開の要素が多いのです大変が、まったく手掛かりがないわけでもありません。
青野先生の書籍においては、新四段当時の青野先生の対局料や固定給が書かれています。
当時と比較して現在は何倍くらいであるか、曖昧にではありますが、書かれています。
固定給について説明された章には、次のような言葉が書かれていました。
(なお、当時とは物価が大きく違うことに注意しましょう。)
1年たって2万8000円となり、これがC級2組の正規の給料と知った
固定給についての章に書かれていたことから、この2万8000円というのは固定給のことだと思います。
(この解釈によれば、当時は固定給のことを給料と呼んだことになります。)
なお、「1年たって」というのは、最初の頃は正規の月給より安い額しかもらえなかったことに関係します。
「C級2組の」とありますが、そもそも最初は正規の金額でなかったのは、まだ全棋戦に出ていなかったからとのことです。
ですので、この2万8000円という固定給は、順位戦以外も含むものであると思われます。
青野先生は、現在の固定給に関して、次の言葉を書かれています。
いまでも固定給に関しては、当時の数倍程度のものである。
一方、インターネット上で調べてみると、C級2組の棋士の固定給は、約15万円程度と出てきます。
この金額は、「数倍」という言葉の解釈によっては、青野先生の書籍から判断できる固定給の金額と一致します。
実は私は、英語で、”a few”という言葉を「数倍」と訳す教わって以来、「数倍」は2倍から3倍のことだと思っていました。
一方、”a few”と似た言葉に、”several”という言葉があり、こちらはもう少し大きいようです。
「数倍」を、5倍から6倍くらいだと思っておけば、C2クラスの固定給は15万円程度ということになります。
インターネット上の「噂」と一致することもあり、きっとこちらが正しいのでしょうね。
もしも「数倍」を2倍から3倍だと思ってしまうと、約6万円から9万円程度となります。
どちらを信じるかは読者のみなさまにお任せします^^
「最低いくら」という話をしているので、順位戦からの収入のないフリークラスの固定給も算出しておきましょう。
フリークラスは、固定給の7割を占める順位戦の寄与がないのでしたね。
各棋戦での活躍が、デビューしたての新人と同程度の場合は、上記金額の3割になってしまいます。
月あたり、約2万円から5万円くらいの範囲にあると考えられます。
もちろん、森内九段のような実績あるフリークラス棋士はこのかぎりではありません。
対局料の方は、どうでしょうか?
青野先生は、新四段時代の対局料についても書かれています。
当時の対局料は、3種類あったそうです。
当時との対局料の比較に関しては、次のコメントがあります。
竜王戦を除けば、数倍から10倍くらい
またしても「数倍」が(笑)。しかも今度は幅がありますね。
しかも竜王戦予選トーナメントの対局料がわかりません。
一方、竜王戦の賞金と他のタイトル戦に関しての次の言葉があります。
(書籍の出版当時の情報なので、叡王戦以外の情報になります。)
契約金が竜王戦の3分の1から4分の1くらいだから、だいたい優勝賞金額はそれに準じているといってよい。
ここでは仮に、このことが対局料についてもあてはまると考えておきましょう。
つまり、竜王戦の対局料は、他の棋戦の3倍から4倍くらいと考えることにします。
本当は棋戦によって違いがあるのかもしれませんが、とりあえずそのことを考えずに対局料を概算してみます。
「数倍」の解釈も含めて、大きく幅がありますが、だいたいの予想値ということでお許しください。
後は棋士の年間対局数から、年収への対局料からの寄与を求めるだけです。やっとここまできました(笑)。
勝率がもっとも低い棋士の対局数は、年間10局程度です。
若手であれば、若手専用(?)の棋戦もあるので、どんなに負けていてももっと多いでしょうけれど、今回はとりあえず年間10局指す棋士の対局料を出します。
10局のうちの1局は竜王戦とします。すると、年間の対局料合計は?
約18万円から91万円の間です。
随分と幅がありますが、今回の検討から、この範囲にあると結論づけられます。
【竜王戦の賞金・対局料について知りたい方はこちら】 => 竜王戦の賞金額や対局料まとめ【7番勝負から挑決T、ランキング戦まで】
以上の考察をもとに、棋士の年収を下から評価してみます。
(「下から評価」は最低値を出す、というほどの意味です。数学用語です。)
順位戦の一番下のクラスであるC級2組順位戦に参加して棋士の対局からの収入の最低ラインは次のようになります。
90万円から271万円。
フリークラスの場合も出しておきます。
42万円から151万円。
いかがでしょうか?
実際には、棋士の収入には普及に対する謝礼もあります。
昔はボーナス代として出された分を、普及への謝礼金にとして支払うようになったそうなので、「仕事がない」という状態にはなりにくいものと考えられます。
勝率が下がって対局数が減った場合は、対局以外の仕事をすることもできるし、将棋の勉強に時間を割いて勝率を上げることもできると思います。
また、どんなに勝率の低い棋士でも、勝率1割はあるようですので、上記の対局料の少なくとも1割をプラスした金額も収入に入ります。
もっと勝てば年間対局数もその分さらに増えるので、収入も増えます。
また、噂されている固定給の金額と一致し、「C級2組の年収が社会人2年目くらい」という青野先生の本にもある言葉とも一致しそうなのは高めの見積もりの方です。
また、最近の新人棋士は、デビュー後早速勝ち星を手に入れています。
このように考えると、棋士という職業の収入に関しては、棋士を目指すことを妨げる理由にはなりにくいと言ってよいかもしれませんね。
【こちらもおすすめです】 => 将棋の順位戦のまとめ記事|名人戦やフリークラスとの関係についても
今回は、棋士が対局でもらう収入のうち、対局料と固定給について調べてみました。
また、棋士の収入について、その最低ラインを予想してみました。
実績がないうちにフリークラスに落ちてしまうとかなり厳しいかもしれませんが、少なくともデビューしたての棋士は対局だけからも十分な収入を得ることができ、将棋の研究や普及活動その他に力をいれていけば、かなりの収入を安定して得ることができそうですね。
ただ、今回示した数字はあくまで予想ですので、目安程度に考えてください。
すでに棋士を真剣に志すお子さんがいらっしゃる方は、収入面も含め、実際に棋士の先生に色々たずねておくとよいでしょう。
微妙で情報の少ない分野についての労作で、多大の敬意を払いたいと思います。但し私は身近に棋士を目指す者がいるわけではなく、全くの好奇心で読ませていただきました。