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羽生善治九段が、将棋の公式戦で、
一手詰めをうっかりして負けた話をご存知でしょうか?
対戦相手やその後の後日談(?)なども考えると、
感慨深いような気がしてくるこの逸話について語ってみたいと思います。
羽生善治先生の一手頓死エピソードといえば、
将棋ファンの間では有名な話のようですが、
新規のファンの方たちのために説明しておきたいと思います。
まずは、将棋の「頓死」という用語についても意味を確認しておきましょう。
「りゅうおうのおしごと!」では、「頓死しろ!」という暴言(?)がよく出てきますね。
意味は、自分の手番で何か受ける手(守りの手)をやらないと、
次に詰まされてしまう状態、いわゆる「詰めろ」の状態にあるときに、
受けの手をせずに、関係ない手(敵陣を攻める手など)をやってしまったがために、
次の相手の手番で詰まされてしまう、という意味です。
要するに、うっかりで自分の王将(玉将)を
相手に詰まされてしまうということですね。
羽生善治九段の一手頓死という出来事が起きたのは、
第14期竜王戦挑戦者決定戦3番勝負の第一局でした。
第14期の竜王戦なので、2001年のことになります。
羽生善治九段は当時は四冠で、
そのころは、藤井猛竜王(当時)が竜王を連続防衛していて、
前年の第13期でも挑戦したものの、退けられてしまい、
リベンジすべく竜王戦に再度挑戦しようとしつつありました。
その挑戦者を決める3番勝負の初戦で、
ほぼ100パーセント勝ちの局面で、
相手の王手に対して、間違った方向に逃げ、
次の一手で詰んでしまったのでした。
間違った手の直後の一手で詰んだので、「一手詰」をうっかりした、
と表現されているわけですね。
これがもし、詰んだのが次の次の一手であれば、「三手詰をうっかりした」、
という表現になりますね。
一手詰をうっかりしてしまった第14期の竜王戦挑戦者決定戦ですが、
そのときの対戦相手は、木村一基五段(当時)でした。
今では九段のトップ棋士です。
木村一基五段(当時)は、年度成績がすごく、
いっときは、「勝率9割男」というような快進撃でした。
今の藤井聡太二冠に近いくらいの活躍だったのですね。
羽生四冠(当時)に逆転で勝利した木村五段(当時)でしたが、
その後、二勝を返され、挑戦者決定戦3番勝負は二連敗に。
勝った羽生先生は、竜王戦に挑戦して竜王奪取に成功。
一方の木村一基先生の方ですが、第14期の竜王挑戦こそ逃したものの、
その後も何度かチャンスを掴み、竜王戦や王位戦といったタイトル戦に挑戦しました。
それでもことごとく防衛されてしまい、無冠時代が長く続きました。
しかし2019年、豊島将之王位(当時)への挑戦権を得て、
7番勝負に勝利し、王位を奪取。
46歳での初タイトルは、最年長記録となったのでした。
悲願のタイトルでしたが、翌2020年には、
藤井聡太七段(当時。途中から棋聖の肩書きに)に挑戦され、
4連敗でタイトルを奪取されてしまいました。
木村一基先生には、熱烈なファンも多く、それでなくとも応援したくなるような人柄なので、
藤井聡太二冠誕生を喜ぶファンの中にも、やや複雑な心情の方も少なくなかったと思います。
しかし、タイトルを失ったくらいでめげてしまう木村一基先生ではなく、
また気を引き締めて将棋界のトップ棋士の一人として、
これからも熱い戦いを繰り広げられることでしょう。
さて、木村先生の方の後日談というかその後のエピソードについて、
たくさん書いてしまいましたが、では、羽生先生の方はどうなのでしょう?
羽生善治九段ですが、やはり、一手詰で負けたことについては、
かなりショックではあったようです。
以前、「ニコニコ超会議」でお話されていました。
加藤一二三九段(ひふみん)、つるの剛さんとの県談でのことです。
「気づいた瞬間、血の気が引いた」「初心者時代以来、久しぶりの経験だった」というようなコメントがありました。
どうしてこのような話になったかというと、
「神様が一手だけやり直させてくれるなら?」という質問に対して、
この一手頓死したしまった手を指し直せれば、と羽生先生が答えたためです。
「一手詰」はプロなら恥ずかしい、とのことで、
やってしまったことがそうとう悔しかったのだとお察しします。
また、これ以来、羽生先生の対局中の表情が険しくなったとう説(?)もあります。
これはAbemaTVの将棋チャンネルが始まったばかりの頃に、
過去の朝日杯を放送していたのを観て、そのときの解説で知りました。
ほとんど勝勢の状況にもかかわらず、確かに羽生先生の表情はとても険しく、
眉間にしわを寄せて考えているお姿が印象的でした。
この説が本当であれば、木村一基先生は、羽生善治先生の表情を厳しくした棋士だということになりますね。
レジェンドである羽生先生にそこまでの影響を与えたのだとすれば、
木村先生のプロ将棋界への影響もまた大きなものなのかもしれません。
羽生善治九段の一手頓死の話についてまとめました。
最後の方の話に関しては、達人の域になる人ほど注意深く、基本を大事にする、
ということの一例ともいえるかもしれず、何事も基本をおろそかにしないようにしたいと思いました。
この話の他に、木村一基九段には、受けの強い棋士で、
玉将がどんどんと前に出ていく力強さだったりといった棋風・持ち味の面での魅力、
また、「解説名人」と呼ばれるような名解説などの特色などなど、
大人気である理由がたくさんあります。
というわけで、木村先生を今後も応援していきましょう(^^)。