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2018年10月30日、フルセットとなった第66期王座戦5番勝負が決着しました。
結果は、「西の王子」のあだ名をもつ、挑戦者の斎藤慎太郎七段の勝ちでした。
これにより、「斎藤慎太郎王座」が誕生しました。
斎藤先生、自身初となるタイトル獲得、おめでとうございます!
一方の中村太地先生は、王座失冠、今後の肩書は、「中村太地七段」となります。
今回の番勝負は、2018年度から新たに加わった八段昇段の規定の存在を意識しながらみると楽しいものでした。
というのは、中村太地先生の八段昇段がかかっていたためです。
【関連記事: タイトル2期獲得で八段になるのは誰だ?新規定初の昇段者有力候補は?】
新規定での昇段条件は「タイトル2期獲得」ですので、中村先生が「新規定八段昇段レース」で最も有利な立場にありました。
しかし、今回タイトルを奪取されてしまったので、斎藤先生を含む他の棋士に先を越される可能性が高まりました。
では、現時点で、「初のタイトル2期による八段昇段」に一番近い棋士は誰なのでしょうか?
以下、状況を整理していきましょう!
目次(もくじ)
新規定により近々八段昇段する可能性の高い棋士とは、どのような棋士でしょうか?
それは当然、七段の棋士の中で、(1期の)タイトル獲得経験がある棋士になります。
それぞれ、どのくらい昇段の可能性があるのでしょうか?みていきましょう。
もし高見泰地叡王が、現在もっているタイトル「叡王」を防衛すれば、2連覇で通算2期となり八段昇段となります。
次の叡王戦7番勝負は、2019年度の4月開幕で、遅くとも結果は6月ごろまでにはでます。
高見叡王が初タイトル叡王を連覇し、同時に八段昇段するかどうか、注目ですね!
ただ、高見叡王の場合は、他のいくつかのタイトル戦(棋王戦、王将戦、棋聖戦、王位戦)で、すでに敗退していることもあり、叡王戦のチャンスを逃せば、昇段は当分お預けとなってしまうかもしれません。
当然ですが、斎藤慎太郎王座も、来期の王座戦で防衛すれば、タイトル通算2期で八段昇段となります。
高見叡王の場合もそうですが、タイトル戦は挑戦者になって番勝負に出るまでが大変なので、現タイトル保持者は番勝負登場がすでに決まっているという点で、有利ですね。
それだけでなく、斎藤王座の場合は、叡王戦で本戦入りしているので、叡王挑戦の可能性もあります。
1回戦から、王座戦挑戦者決定トーナメントで倒した強敵・藤井聡太七段との対戦になりますが、もし勝てれば勢いがつくでしょう。
さらに、斎藤慎太郎王座は、竜王戦で3組準優勝して、2組への昇級を決めています。
これは、竜王挑戦を目指す上で、有利になってきます。
2組というのは、今回お名前を挙げる棋士たちの中では、群を抜いています。
ちなみに斎藤慎太郎王座の場合、新規定での昇段以外にも2018年度中の八段昇段の可能性が残っています。
B級1組順位戦で、師匠の畠山鎮七段との師弟対決には敗れたものの、5勝2敗(10/31現在)と好成績であるためです。
A級への昇級によって八段昇段する可能性も十分に残っています。
勝敗と順位を考慮すると現在3位の成績で、昇級のためには上位2名に入る必要がありますが、タイトル獲得によって自信を得た斎藤王座には、期待できると思います。
実は、もっとも早く、タイトル1期の七段棋士がタイトル2期昇段が実現するシナリオは、次の通りです
中村太地七段が王将戦で挑戦者になって王将奪取。
現在、王将リーグで1勝2敗とあとがない状況ではあります。
しかし、王座戦5番勝負でもあとがないカド番の状況から2連勝して中村先生のこと。
王将リーグでも2連勝してプレーオフまでもちこめる可能性はあります。
また、中村七段は、叡王戦には本戦から出場なので、叡王挑戦の可能性もあります。
予選免除メンバーが決められた時点では、タイトルホルダーでしたから。
初戦は佐藤天彦名人という強敵ですが、中村太地七段が元タイトル保持者の意地をみせることができるかどうか。
注目の対局になりそうです。
また、中村七段は、叡王戦と同様に、棋聖戦も本戦シードされているはずです。
現在公開されている1次予選と2次予選のトーナメント表に中村七段のお名前がないことから、予選免除となったことがわかります。
それから、中村七段は、元王座なので、王座戦では、本戦(挑戦者決定トーナメント)からの出場となります。
勝ち抜いてまた王座戦5番勝負の舞台に登場する可能性もあり、その意味でも、八段昇段のチャンスはまだまだ残っているといえそうです。
菅井竜也七段も、中村七段と同じ理由で、叡王戦に本戦からの出場となります。
初戦の相手はなんと、羽生善治竜王。
中村七段と同様、いきなり強敵との対戦になってしまいますが、羽生先生から王位を奪取した菅井七段としては、勝って叡王獲得に向けて勢いをつけたいところですね。
また、菅井七段も、元王位ということで、王位戦は、挑戦者決定のリーグ戦からの登場となります。
挑戦者になって豊島二冠へのリベンジマッチを制し、八段昇段を決めたいところです。
なお、菅井七段は斎藤王座同様、順位戦B級1組ですが、残念ながら1勝5敗という勝敗なので、A級昇級による八段昇段の可能性はありません。
色々書きましたが、重要なのは次の点です。
すでにタイトルを1期獲得した七段棋士の誰かが、新規定昇段する可能性が高い。
高見叡王か斎藤王座の防衛による昇段が、一番実現可能性の高い「初の新規定八段昇段」のシナリオである。
その他に、斎藤王座の叡王奪取、菅井七段の叡王か棋聖あるいは王位奪取、中村七段の王将か棋聖あるいは王座奪取によるタイトル2期実現の可能性が考えられます。
しかし、彼らがタイトル防衛や挑戦権獲得、タイトル奪取に失敗し、別の七段以下の棋士が先にタイトル2つを獲得して新規定八段昇段を決める可能性も、ゼロとはいいきれませんよね。
たとえば、藤井聡太七段です。
藤井七段は、叡王戦本戦入りしていますし、棋聖戦1次予選でも今のところ勝ち残っています(10/31時点)。
さらに、王座戦は、ベスト4入りしたので、来期は本戦からの登場となります。
つまり、現時点でタイトル挑戦の可能性はかなりあるわけですね。
そして、朝日杯優勝やスピード昇段のときのようなすさまじい勢いで、一気に二冠にのぼりつめてしまう可能性も、決して否定はできません。
そこまでいくかどうかはともかく、藤井七段が次いつタイトルに近づくか、とても楽しみですね。
今回は、2018年度から始まった、タイトル2期獲得による八段昇段という新しい昇段規定に関連した内容でした。
斎藤慎太郎先生による王座奪取によって、「誰が最初に新規定で八段になるか」のレース(?)が、まだまだ続きます。
現状を考えると、有力候補は、タイトル1期をすでに獲得の済みの七段若手棋士たちです。
その中でも、現役タイトルホルダーである高見泰地叡王と斎藤慎太郎王座は有利な立場にあります。
しかし、他のタイトル1期七段棋士たちにも、またタイトルに挑戦できる可能性が残っているので、どうなるかはわかりません。
また、斎藤王座が先に別の規定で昇段(A級昇級による昇段)を決める可能性もあり、この点にも面白さがあります。
さらに、藤井聡太七段のような、タイトル未挑戦ながら勢いのある若手棋士に、高見・斎藤・中村・菅井先生たちが追い抜かれる可能性もないとはいいきれず、「誰が最初に新規定で八段昇段するか」戦線から目が離せません。