【当サイトの記事はPRを含む場合があります。】
ひふみん人気や藤井フィーバーなどをきっかけに
将棋ブームが起きて結構経ちますね。
でも実感としては、将棋に
ほとんど関心がない人もまだまだ多くて残念だな、と(笑)。
「将棋って難しそうだし、厳しい勝負の世界だから、
あまり親しみが湧かないかも」
そういう人もたくさんいらっしゃるかと思います。
でも最近は、次々と、色々な
将棋の漫画が話題になったり連載スタートしたりしていて、盛り上がっているみたいです。
漫画ならきっと誰でも楽しめますし、
読んでいるうちにだんだんと将棋の世界に親しみをもつようになっていくでしょう。
むしろ夢中になるかもしれません。
スポーツ漫画とかに影響されて運動部に入るのと同じような感じで。
将棋の話題が盛り上がっている今だからこそ、
漫画をきっかけにして興味を持ち始めるといいかも、と思います!
以下、将棋漫画を題材にして、プロ将棋の世界について、
入口の時点でどれほど厳しい世界であるか、ということを解説します。
どの漫画かというと、少年ジャンプに掲載された作品「紅葉の棋節」の第1話になります。
あと、ついでにちょっとした感想も書いておきます。
目次(もくじ)
漫画「紅葉の棋節」の主人公・蔵道紅葉について、まずは説明します。
「紅葉の棋節」の主役、蔵道紅葉(くらみちもみじ)は、プロの棋士を目指す少年です。
中学1年生で、プロの棋士を目指しています。
紅葉がプロになりたいのは、お兄さんへの憧れがあるようです。
兄の蔵道桜はプロ棋士で、将棋界最高のタイトルである
「竜王」まであと一歩に迫り、伝説となった人でした。
「でした」と書いたのにはわけがあるのですが、
それについてはネタバレを避けて一応伏せておきますね。
棋士になりたい紅葉少年ですが、第1話の時点では、
自分には才能がない、と、かなりディープに落ち込み気味です。
まあ、彼の目指す目標(=兄)のことを考えると当然なのですが、
個人的には、アマチュアとしてはすごい実力だから自信をもてばいいのに、とか思ってしまいます(笑)。
紅葉はアマチュアとしてはすごい実力、と書きました。
実際、全国大会でベスト16にまで勝ち進んでいます。
もちろん中学生の大会ですが、普通にアマチュア視点で考えると相当な棋力です。
当然、有段者、それもアマ四段以上はあるでしょう。
そんな素晴らしい戦績を挙げた直後に、あろうことか、
ものすごい落ち込み方をします。
落ち込むというかもう、暴れてました(笑)。
ロッカーに頭突きとかしてました。
頭突きって。。。
ギャグ漫画じゃないんだから。
彼は次のようなことを言っています。
「奨励会を目指してもう数年になるけれど、全国ベスト16では受験資格すらない。」
奨励会とは、将棋のプロを目指すために入る期間のことです。
そう、恐ろしいことに、全国ベスト16という、
傍からみれば素晴らしい成績であっても、プロを目指す資格さえない、という事実があるのです!
プロを目指すために入らなければならない奨励会。
その受験資格とは、どのようなものなのでしょうか?
該当する紅葉の台詞を抜き出してみます。
「奨励会の受験資格は15歳以下のアマチュア全国大会で最低ベスト4以上」
なんと、全国ベスト4以上です。
日本中の中学生の中で、最強の4人の中の一人である必要があるのです!
正確にいうと、すでに奨励会入りしている子は大会にでてこないので、
「奨励会員以外の中学生で」という但し書きが入りますが。
これは厳しい条件ですね。。。
でも、実は、ベスト4にまでいかなくても受験資格を得る道はないわけではないのです。
いきつけの将棋道場で、紅葉は席主らしき人に怒られます。
どうやら大会で暴れたことが知られてしまったようです。
なにしろ、大会で負けた相手にも頭突きしてましたからね。
理由は八つ当たりではなくて、兄の悪口をいわれたからなので仕方ないのですが。
そこで、道場の人にいわれた言葉に注目です。
「ベスト16でもプロの弟子になれば受験できるのに・・・」
そう、実は奨励会受験資格を手に入れる方法は、大会ベスト4入り以外にもあったのです。
師匠になってくれるプロ棋士をみつければいいのです。
正確にいうと、推薦してくれるプロ、なのですが、入会後にその棋士に弟子入りするのが普通らしいです。
ただ、席主さんの言葉からもわかるように、紅葉の場合、ちょっと問題があるみたいです。
さっきの言葉には続きがあって、
「こんな問題児誰が弟子にとる!?」
だそうです。
大会で暴れてしまうような子なので、師匠をみつけるのも大変そうです。
本人からも、「師匠なんていらない」、
という台詞が飛び出します。
ちなみに、奨励会に入れたら誰でも師匠が必要になるので、あくまで受験の時点の話だと思います。
するとこの言葉は、推薦なんていらない、ということを意味しています。
これは単なる強がりではないようです。
情けで師匠になってもらうのでは意味がなく、
実力で認めさせなければいけない、という、筋の通った信念によるものです。
少なくとも、単に推薦をしてもらうとかいう発想ではなく、
「全国ベスト4以上の実力」がなければならない、と考えていて、
将棋に対する真摯さがうかがえます。
そういうところが、この蔵道紅葉というキャラの魅力だと思います。
とはいえ、努力や信念だけでは厳しい状況は好転しません。
彼は、自分の限界という壁を乗り越えることができたのでしょうか?
紅葉の棋節の第1話から、
一つの道で一流を目指すために大切なことが2つ、学べます。
次の通りです。
後者はこれまでの説明で、察していただけるかと思います。
うまくいかないときでも感情的になるのをある程度おさえられなくては、
周囲からの協力が得られなくなるリスクがあります。
今の話の場合でいえば、師匠になってくれる人がみつからないリスクですね。
前者については、以下に述べます。
ベスト16どまりだった全国大会と別の大会で紅葉は、
再び同じ相手(それもいつも負けている苦手な相手)と当たります。
その再戦までの1カ月間、兄の弟子である市原六段に鍛えられたものの、
またしても大会で苦戦を強いられます。
でも、そこでようやく覚醒し、劣勢を跳ね返し、逆転するのです。
どうして逆転できたのか、
どうして急に真の力(才能)を発揮できたのか?
戦いの中で紅葉は、市原六段との稽古の日々を思い出します。
「とんでもなく強い」相手と自分はたくさん練習将棋をやってきたのだ、と。
そして、こだわってきた兄の「桜流」を捨てろ、という、市原六段がしてきた助言の通りにします。
それまでは半信半疑で素直に実行していなかたようです。
それまでは、「桜流」という「棋風」の兄の将棋を真似してきたのですが、
ここにきて紅葉は、自分の将棋の棋風をつかみはじめます。
兄の将棋の相手をしてきたからこその、
それゆえの、憧れの兄との正反対の将棋。
それこそが、紅葉だからこそ指せる将棋だったのです。
それに気づくことができたのは、
何のおかげだったでしょうか。
大会までの1カ月の間猛烈に将棋の特訓をしてきたことで手に入れた少しの自信。
そして、それ以前の、兄と将棋を指しまくった日々への自負心ではないでしょうか。
あとは、心から将棋を楽しむ市原六段に心が惹かれたこともありますが。
これまで思うように力を発揮できていなかったのは、
兄のような将棋こそが自分の将棋だと思い込んでいたためです。
でもそれは、自分のことをまだよくわかっていなかったがゆえの思い込みでした。
本当の自分の将棋がどういうものか、
自分の本当の強みがどういうものか。
それがわかったことで、真の実力が出せるようになりました。
兄の将棋を捨てたからといって、
兄への思いを否定したことにはならず、
むしろ、正反対の棋風こそが兄との絆の証である、という点も見逃せません。
自分のことを知り、信じることが大切、と書きましたが、それと同時に、
自分を支える仲間と真摯に向き合うことも、
飛躍的に成長するためには大事なことなのでしょうね。
そういうことを考えさせられるとてもいい作品だと感じます。
今回は、将棋漫画の、紅葉の棋節について、
作品紹介を兼ねて、将棋のプロになるための第一歩である、
奨励会受験に関連するところを説明してみました。
その後は、私なりの感想(?)的なことを書きました。
解説やレビューの役割を少しは果たせているといいのですが。
すでに読んだ方はわかるかもしれませんが、
若干わかりにくい作品なんですよね(^^;)
とても面白いので、難しさのせいでコミックを買う人が減ってしまうと残念だな、と。
だから、ブログで解説してみたいと思ったこともあり、
今回のような記事を投稿してみました。
ちなみに奨励会の受験資格については、
以前まとめたことがあるので、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事をどうぞ。
>>こちらの記事もおすすめです
奨励会入会試験での受験する級ごとの年齢制限の違いや初段入会について