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フリークラスと順位戦や引退などとの関わりについてです。
2017年度末の将棋界は、A級順位戦プレーオフやフリークラス棋士・中尾敏之五段の激闘により、順位戦やフリークラスへの関心が高まったと思います。
このブログでも、順位戦やフリークラスの規定や注目ポイントなどについて、まとめていきたいと考えています。
今回はまず、フリークラスについて書きたいと思います。
【関連記事】 => フリークラス宣言のメリットは?給料は減り引退確定でも転出する理由とは
目次(もくじ)
最初に、「そもそもフリークラスって何?」と思った人や、「順位戦とフリークラスはどういう関係があるの?」という疑問を持った方のための情報を書きます。
知っている人は読み飛ばして下に進んでください(_ _)
プロ将棋の棋戦の中でも非常に重要な位置にある順位戦。
名人、A級以下、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組とクラス分けがあります。
どのクラスにも属さず、順位戦を戦わない棋士たちが所属しているのがフリークラスです。
フリークラス棋士たちは、どのような経緯でフリークラス所属に至るのでしょうか?
大きく分けると、3通りあります。
経緯によって、「転出」、「降級」(あるいは「陥落」)、「編入」など、フリークラスに入ることを表す言葉が使い分けられているようですね。
上記の言葉はどれも将棋連盟公式サイトで使われています。
それでは以下で、3通りの各ケースについてもう少し詳しくみていきましょう!
順位戦を戦わないということは、名人という将棋界で最高に権威あるタイトルを目指せないことを意味します。
また、対局からの収入も大きく減ってしまいます。
こうしてみるとデメリットばかりのように思えるフリークラス。
でも将棋界には、「フリークラス宣言」という、自分の意思で順位戦からフリークラスに移ることができる制度があります。
「宣言」による転出をした棋士は、二度と順位戦に戻れません。
これは「宣言による」フリークラス棋士に限った決まりです。
他のフリークラス棋士たちは、条件を満たせば順位戦のクラスに入ることができます(後述)。
それでも転出する棋士はいます。その理由はいくつか考えられます。
今回はその理由の一つについてこの記事後半の引退規定のところで書きます。
フリークラスは順位戦に参加しないクラスと書きましたが、ある意味では順位戦で一番下のクラスとも解釈できます。
順位戦で一番下のリーグであるC級2組の成績が悪く、「降級点」を取り続けると、フリークラスへの「降級」を余儀なくされます。
こうしてフリークラスに入った棋士たちは、いうなれば順位戦で戦いたいけれど対局させてもらえない立場になります。
転出棋士たちと違って、順位戦で対局をしたい気持ちはあるので、順位戦に戻るチャンスが用意されています(後述の順位戦復帰規定)。
現行の規定では、プロ棋士になる通常の方法は、奨励会の「三段リーグ」で上位の成績をおさめることによる四段昇段でした。
しかし、それ以外にも棋士になる方法が2つあります。
前者は、三段リーグで通常の四段昇段者よりも一つ下の順位を取る、ということが2回あった場合、プロになる資格が生じる、というものです。
後者は、アマチュアの方がプロになるための試験である「プロ編入試験」を突破した場合にプロ棋士になれるというものです。
どちらの場合も、フリークラスからのスタートとなります。
通常の四段昇段であればC級2組順位戦からのスタートであることを考えると、やや条件の悪いプロデビューとなってしまいます。
でも、条件を満たせば、C級2組順位戦への「昇級」が可能です。
宣言によるフリークラス転出棋士は、残念ながら二度と順位戦に復帰できません。
一方、フリークラスに陥落した棋士と、フリークラスからデビューした棋士には、順位戦に復帰あるいは新規参戦をするチャンスが設けられています。
順位戦以外の棋戦で好成績が出せれば順位戦に昇級できるのですが、どのような条件であるかをみていきたいと思います。
どれか一つの条件を満たせば順位戦に参加できます。
「年間」というのは、「年度」、つまり4月1日から3月31日までのことです。
年間の成績についての条件は以下の2種類があります。
前者は、勝率6割以上という時点でかなり大変です。
後者は、順位戦抜きで年間30局以上となってしまいますので、もっと厳しい条件だと思います。
「年間」がつかないの成績条件はかなりシンプルです。
わかりやすいのですが、これも大変な条件ですね!
30局以上も戦って、6割5分というのは、かなり活躍している棋士の数字だと思います。
上記の成績条件が物語るのは、トップ棋士並みに活躍してしまえばフリークラスを抜けられる、というようなことだと思います。
実際、フリークラス抜けの残る一つの条件は、下記の通りなのですが、要するにトップ棋士の仲間入りをすることです。
もはや幻の条件といってもよいでしょう。
もしも将来この条件でフリークラス抜けする棋士が現れる可能性があるとしたら、次点2回で四段昇段した若い人でしょうね。
藤井六段並みかそれ以上の天才がいつの日か登場し、この幻の条件を現実に変える日がくるのでしょうか?
フリークラス棋士になった時点で、引退までのタイムリミット的なものが生じます。
棋士は勝ち続ける限りはいつまでも現役でいられるもの。
でも、宣言によってフリークラスに行ったらその時点で、その棋士の引退の時期が決まってしまいます。
順位戦の対局料や固定給ももらえなくなる上に、現役でいられる時期が短くなってしまう。
一見、フリークラス宣言はとても損なもののように思えますね。
けれど、フリークラスに降級によって移った場合は、宣言の場合よりも引退までの時間が短いのです!
宣言によるフリークラス棋士は、15年にある年数を足した年数だけ現役でいられます。
その年数とは、もし順位戦に参加を続けて、毎年降級点を取り続けた場合、フリークラスまでたどり着くのにかかる年数、です。
正式(?)名称を「順位戦在籍可能最短年数」といいます。
では、フリークラスに降級した棋士や、フリークラスから棋士デビューした棋士の場合はどうでしょうか?
こちらは単純で、10年以内に規定の成績(上述)をあげて順位戦に上がらなければ現役を引退しなければなりません。
さて、これでおわかりになったと思います。
棋士が「フリークラス宣言」する理由の一つは、降級点によるフリークラス行きは、引退までの期間が短すぎるので、引退までもっと猶予のある、宣言によるフリークラス行きを選択する、というものです。
もちろん、宣言さえしなければ、10年かけて順位戦にいつか復帰できる可能性もあるので、あえてフリークラス宣言をしない、という選択肢もあります。
しかし、復帰のための条件は厳しいので、確実に手に入る「現役続行可能期間の長さ」(降級した後復帰できなかった場合と比べての)を選択するというのも、合理的な選択です。
加藤一二三先生をご存じの方なら、棋士という職業には定年がないことに気づいておられるでしょう。
今やほとんどの方が加藤先生のことは知っていると思うので、ほとんどの方はお気づきだったことと思います。
でも、フリークラスの場合は定年が設けられてしまっています。
宣言による転出者の場合は、65歳で引退です。
ただし、「順位戦在籍可能最短年数」の期間内であれば、65歳を過ぎても現役続行できます。
その場合は、在籍可能最短年数を消費しつくした時点での引退となります。
一方、降級によるフリークラス棋士は60歳で引退です。
それまでに順位戦復帰ができれば現役続行できますが、それができずにフリークラス在籍を続けてしまうと60歳で引退です。
なお、定年が問題になるのは、降級によるフリークラス棋士の場合だけだと考えてよいでしょう。
「プロ編入試験」で、年配の方がフリークラスから棋士デビューするというようなことがもしもあれば、定年が問題になってくるでしょうけれど。
そのようなことが起これば、2017年度の将棋界もびっくりの大ニュースとなるでしょうね。
以上のように、フリークラスの引退規定は、「10年」や「15年プラスアルファ」以外にも、定年という要素もありますので、その点は注意が必要ですね。
【こちらの記事もおすすめです】 => 将棋の順位戦のまとめ記事|名人戦やフリークラスとの関係についても
今回はフリークラスの制度についてまとめてみました。
理解するためのポイントは、まずはどうやったらフリークラスに入るのかをおさえることです。
現役棋士が自分から移る場合(「フリークラス宣言」)と、順位戦から落ちる場合、そして棋士になるために厳しい条件を承知で編入される場合、という3通りがあるのでしたね。
フリークラスを抜けて順位戦を指せるようになるチャンスがあるかないかとか、引退の時期などの決まりが、「フリークラス宣言」によって入ったのかどうかによって違ってくるので、そのあたりの若干複雑な条件をわかっておけば、色々と事情を理解しやすくなっくるはずですよ^^
是非今後フリークラスや棋士の引退が話題になったときに、この記事を参照なさってください!