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将棋のタイトル戦の7番勝負では、開幕から3連敗した側の棋士が番勝負に勝利した前例はとても少ないです。
二つある前例のうち、一つは将棋界の歴史に残る大きな番勝負でした。
もう一つの前例も、将棋ファンの間では人気のある棋士同士が戦ったシリーズでした。
この記事では、それらの前例について、まとめています。
第77期名人戦7番勝負の第3局で、挑戦者の豊島将之ニ冠が佐藤天彦名人に勝利し、対戦成績を3勝0敗としました。
また、同じく7番勝負である叡王戦も、第3局まで行われていて、挑戦者の永瀬七段が高見叡王に対して連勝し、3勝0敗となっています。
豊島新名人、永瀬新叡王の誕生の可能性が高そうですね。
もちろん、将棋のタイトル戦7番勝負では、たとえ一局目から3連敗しても、その後4連勝すれば、タイトル戦に勝つことができます。
でも、そのような、「3連敗の後の4連勝」による7番勝負勝利の例は、とても少ないのです。
ここでは、過去に将棋タイトル戦のどの戦いの舞台において、7番勝負での3連敗からの4連勝が実現したのか、というテーマで記事にしてみたいと思います。
目次(もくじ)
将棋界では、タイトル戦7番勝負での3連敗のあとの4連勝というのは、長い間ありませんでした。
最初に実現した棋戦は、竜王戦でした。
将棋界の最高峰を争う大舞台で実現したわけですね。
将棋界初の、「3連敗後からの4連勝」が実現したのは、2008年(平成20年)に行われた、第20期竜王戦7番勝負でした。
渡辺明竜王(当時)に、羽生善治名人(当時)が挑戦したシリーズです。
竜王に名人が挑戦という、まさに将棋界の頂上決戦だったのですね。
ちなみに第一局はフランスパリで行われ、故・米長邦雄永世棋聖が立会人、記録係がそのお弟子さんの中村太地四段(当時)でした。
確か、中村太地・現七段が、少し前に、そのときの思い出話をされていた気がします。
そして、最終局の第7局は、将棋の聖地・天童で行われました。
こうしてみると色々と、歴史的な出来事が起こるに相応しい条件がそろっていたみたいですね・・・!
実は、ただ単に、3連敗からの逆転劇が起きたというだけでなく、第21期竜王戦は、将棋史にとってとても大きな意味のある勝負でした。
というのは、「永世竜王」の称号がかかった戦いだったからです。
もっというと、勝った方が、将棋史上初の永世竜王になる、という勝負でした。
渡辺明竜王(当時)は竜王を4連覇中で、5連覇による永世竜王の獲得がかかっていました。
一方の羽生善治名人(当時)は、通算6期竜王を獲得していて、通算7期による永世竜王達成がかかっていました。
羽生善治先生が、その9年後の2017年に永世竜王を獲得して、「永世七冠」の偉業を達成したことは有名ですね。
そのことからわかるように、2008年の第21期のときは、渡辺明竜王(当時)が番勝負を制して防衛しました。
渡辺明先生は、3連敗の後の4連勝と、永世竜王の称号獲得という、将棋界初の偉業を同時に二つも達成したことになります。
実は羽生善治先生は、2008年に森内俊之先生から名人を奪取したことによって、永世名人の称号を得て、「永世六冠」になっていたのでした。
そこから一気に永世七冠達成とはなりませんでしたが、2017年になってから永世七冠達成し、「藤井フィーバー」で大いに盛り上がっていた将棋界がさらに世間から注目される結果になりました。
このあたりのめぐりあわせも、とても興味深いものがありますね。
3連敗してから7番勝負に逆転勝ちした最初の例は、第31期竜王戦の渡辺明先生でした。
将棋界の7番勝負というと、竜王戦の他には、名人戦、王位戦、王将戦、そして一番最近になってできた叡王戦があります。
これらのタイトル戦のうち、2度目の例は、王位戦での出来事でした。
深浦康市王位(当時)に、木村一基八段(当時)が挑戦した、第50期王位戦が2つ目の前例です。
先ほど話にでてきた第21期竜王戦から半年少し後の、2009年の夏に行われました。
先に3連勝したのは、木村一基挑戦者の方でした。
そこから深浦王位(当時)が4連勝を返して、防衛に成功。
木村八段(当時)も強敵で、しかも3連敗という状況であったにも関わらず、防衛できたのは、とても大きな実績ですね。
さすがは不屈の男・深浦康市といったところでしょうか。
ちなみに、以前にも書いたことがありますが、そのときの深浦康市先生は王位戦で、2連覇中で、その2回とも相手は羽生善治先生でした。
さらにいうと、その深浦先生から王位のタイトルを奪取したのは、広瀬章人・現竜王です。
このあたりも詳しく知れば知るほどドラマを感じます。
一方の木村一基先生ですが、タイトル戦に計6回登場していて、しかもその6回の中には、竜王戦(1回登場)も含まれるという、すごい戦歴です。
順位戦でA級にも所属していた(し、第78期からの復帰を果たした)トップ棋士でありながら、タイトルを一度も獲得したことがないので、不思議がられることもあると思います。
開幕後3連勝して圧倒的に有利だった深浦先生との王位戦でチャンスを逃してしまったことには、重い意味があるかもしれませんね。
その深浦・木村のペアがW解説をすると、漫才のようなとても楽しい解説になります。
将棋ファンからは熱狂的な人気がある面白解説をするお二人が、実は、タイトル戦で白熱した勝負を繰り広げたこともあるライバル同士だったという。
こういう妙なギャップがあるのも、将棋界のとても深くて楽しいところですねー(^^)。
今回は、将棋のタイトル戦7番勝負で、3連敗した後に4連勝による逆転勝利というとてもレアなケースについて、過去の例をまとめました。
長い将棋のタイトル戦の歴史の中で、前例がたったの2回ということで、本当に滅多にないことのようですね。
最初の例が登場する以前は、7番勝負で一つも勝てずに3連敗したらもう勝てない、みたいなジンクスもあったかもしれませんね。
それ以上に、将棋界の頂点で争う棋士同士は、実力的に拮抗しているものなので、4連勝もすること自体が、非常に困難なことです。
でも、前例がある以上は、決して不可能とは言い切れません。
現在3連敗中の高見叡王や佐藤名人にも、まだチャンスはあるはずなので、巻き返しが期待されますね。