【第31期竜王戦】都成竜馬-藤井聡太戦の戦型は相雁木!感想書きます

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2018年6月25日、竜王戦決勝トーナメントの対局が行われました。

戦ったのは、ランキング戦5組優勝者である藤井聡太七段と6組優勝者の都成竜馬五段でした。

結果は、藤井七段の勝利となり、次の竜王戦決勝トーナメントの4組優勝者との対局に駒を進めました。

次の対局も楽しみですね^^

 

さて、初戦に話を戻します。

都成五段では、藤井聡太七段は終始優勢を保っていたようです。1局を通して藤井七段らしい強さを発揮した将棋だったように思います。

本人にしてみれば、反省点もあったようですが。確かに途中、手のつくり方が難しい場面や、都成竜馬五段が少し盛り返して差が縮まった場面もあったので、そのことだと思います。しかし、そうした反省はあまりにもレベルが高く、個人的にはあまりに完成度の高い将棋に圧倒されました。

一方の都成五段も途中すごい辛抱をしたり、尋常でない方法で反撃していたりと、見せ場をつくっていました。

若手同士の対局でしたが、タイトル戦の将棋であってもおかしくないような内容であったと思います。

 

今回図面などは用意していないし、さほど詳しくはないのですが、忘れないうちに文章で振り返っておきたいと思います。

「感想」というより個人的な備忘録的なものになってしまうかもしれませんが、少しはお楽しみいただければ幸いです。
 

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都成五段が先手、藤井七段が後手で相雁木に

 

本局は最初、先手と後手、お互いが「雁木囲い」に組む、「相雁木」の戦型になりました。

しかしその後、両者ともに、あまりみたことがないような手で、囲いを変形(?)し、雁木の形が崩れてしまいます。

なので、この将棋の序盤・中盤を観賞するポイントは、相雁木の状態から、お互いの囲いが雁木でなくなってしまったところまでだと思います。

 

先手が46銀から仕掛ける

 

途中は先後同型のような感じでしたが、途中から両者は相手と別な構えをとり始めました。

 

先手の都成五段は37地点に銀を配置しました。

一方、後手の藤井七段は73地点に桂馬を配置しました。

 

先手は37の銀を46に繰り出していく「早繰銀」から35歩と仕掛けて攻めていきました。

 

後手が33金として珍しい囲い(?)に

 

藤井七段は「33金」という珍しい形にする手を指しました。

これで後手の守りは雁木でなくなりました。

しかも後手はその後、玉を32地点にもっていきました。これで32金と引いてすぐに雁木に戻すこともできない状態に!

確か以前にも、竜王戦ランキング戦の阿部隆八段との将棋でもこれと似たような囲いを藤井六段(当時)はつくっていましたね。

 

この不思議な囲い(?)が上部にかなり厚く、先手は仕掛けたものの一気に決める手段はありませんでした。

 

先手は67の銀を腰掛け銀(?)に

 

先手は仕掛けたことにより3筋の歩を切ることはできたものの、後手の厚みのために思うように攻められず、むしろ3筋に傷をかかえた状態となってしまいました。

実際、後手の角が64から、先手の飛車のこびん(斜のライン)をにらんできて、後手から45歩と突かれる筋が生じました。

 

先手はそこで、67にいた銀を56銀と、「腰掛け銀」の位置に動かしました。

通常、「腰掛け銀」は右の銀を56にもっていくのですが、左の銀を「腰掛け」させる珍しい手でした。

以前、魂の7番勝負の三浦-増田戦の際に、解説の飯島七段が同様な手を予想する場面がありましたが、そのときは実戦には現れませんでした。

 

これで先手の雁木も崩れました。

もはや何の戦型かもわかならい将棋になり、未知の戦いの始まりとなりました。

 

手のつくりにくい将棋に

 

お互いに相手の狙いを消しているので、すぐには戦いになりにくい将棋となりました。

しばらく自陣を整備する手が続きます。

 

先手は銀のない矢倉(?)に

 

先手は雁木囲いから67の銀が離れた状態なので、58の金の位置が中途半端でした。

それを67に動かして、「矢倉囲い」のような形にしました。

ただし、通常の矢倉では銀が77にいるのですが、本局の先手の陣形では、77に銀はいません。

 

また、矢倉では通常68に角がいることが多いですが、後手から86歩と突いてきて、角交換になったので、その点で矢倉と違う格好になりました。

 

後手は部分的にツノ銀雁木に

 

一方の後手の陣形はどうなったでしょうか?

角交換が行われたあたりでは、次のような感じでした。

 

右銀は63、右の金は52にありました。つまり部分的には、いわゆる「ツノ銀雁木」の形でした。

ただし、5筋の歩は54歩と突いてありました。

 

後手は角換わりでおなじみの62金型に

 

飛車は81の位置にあり、「一段飛車」でした。

飛車がこの位置にいることが多いのが、藤井七段の得意戦法である角換わりの戦型です。

しかも、角交換した後に後手は「62金」と金をより、これまた角換わりでよくみる形にしました。

この「62金」のところでは、先手陣角を打ち込んで一気に勝負を決めに行く手もあったようですが、藤井七段はこの渋い手を選択しました。

62金の後も、63の銀を72銀と引く手なども指しました。この手は8筋から銀を攻めに使っていく含みもあったようですが、一気に暴れるのではなく確実にポイントになる手をじっくり指していく落ち着いた指し回しであると感じます。

 

都成五段の辛抱!36歩

 

渋い手をみせたのは後手の藤井七段だけではありません。

 

本局では、都成五段から非常に渋い手がでまた。

「56銀」の少し後のあたりで、持ち駒の歩を「36歩」と打った手です。

 

先手は「37桂」と桂馬を跳ねていたのですが、放っておくとすぐにこの桂馬の頭を歩で狙われてしまいます。

そこで、桂馬の頭に予め歩を打つことで、その筋を消したのでした。

こうしておきさえすれば、46に銀がいることもあり、桂頭攻めに対してはガードできているのですが、自分から仕掛けてきった歩であるだけに、中々打てるものではありません。

 

形勢不利な状況でしたが、簡単には土俵をわらないようにする、都成五段の勝負への執念がこもった一手だったと思います。

 

この後も、先手は囲いの金の連携をよくして自陣を堅くする手を指すなど、後手が簡単には突破できないようにする頑張りをみせました。

 

都成五段の攻めをしのぎ藤井七段が寄せきる

 

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お互いに渋い手がでたことを書いてきました。

でもやはり本局の一番のポイントは、都成五段の激しい攻めとそれに対する藤井七段の的確な対応にあると思います。

 

都成五段の猛攻わずかにとどかず?

 

先手の都成五段は、玉砕覚悟で一気に後手陣を攻略しにいきました。

 

56と46に並んでいた銀を攻めに使う手をひねり出します。

37にいた桂を犠牲に、銀を前に進出させ、3筋や飛車のにらみが効いた2筋からの後手陣の突破を試みます。

 

しかし、的確に対応されて、攻め方が難しい状況になりました。

結局、後手の「23歩」で飛車を追い返されそうになり、飛車を見捨てて「44角」と62の金に狙いをつけました。

 

アマチュアならばこの攻めはかなりこわいと思いますが、見切られていました。

先手の決死の猛攻撃でしたが、わずかに足りなかったのかもしれません。

 

藤井七段の対応「82飛車」から「92飛車」が見事

 

さて、先手は飛車を渡したものの、「62角成」と金をとりながら馬をつくりました。

さらにこの馬が後手の72の銀にあたっているので、部分的には先手もやれそうにもみえる場面となりました。

しかし、ここからの藤井七段の対応が見事で、まったく紛れることなく勝ちにもっていってしまいました。

82飛車と駒を使わずに受けた手、続く71馬に対して端に飛車を逃げた「92飛」という手が冷静で、美しささえ感じされる手順でした。

 

後手はこの時点で、84に設置した桂馬という大きな存在があり、この桂馬や73の桂馬、さらに手入れた飛車(これは結局先手陣に打ちました)の存在が大きかったのですが、「92飛」により、自陣にいた飛車までも攻めにが効いてくるという、先手玉への恐ろしい包囲網ができあがりました。

最終盤では、先手陣は都成五段の執念が現れたような、金が3枚も並ぶ分厚い陣形であったにも関わらず、あっという間に先手玉が絶体絶命に追い込まれました。先手の「93銀」という最後の粘りさえも空しく、寄せきられてしまいました。

 

途中は都成先生が力を発揮して差を縮めるなど、非常に見ごたえある将棋でしたが、今回はそれ以上に藤井七段の強さが光りました。

終盤での後手の駒の躍動や先手陣の急所への殺到を観て、「藤井将棋」の強さや(観ている側にとっての)楽しさを改め思い知りました。

 

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まとめ

 

いかがでしたか?

今回は竜王戦決勝トーナメントの都成-藤井戦を振り返ってみました、

非常に面白い将棋で、勉強にもなりました。

 

次は藤井七段は増田六段と当たります。第30期竜王戦で佐々木勇気五段(当時)に敗れたのと同じ舞台です。

勝てば、竜王戦において、1年前よりもさらに上のステージで戦うことができるので、是非とも勝ちたい対局となります。

 

 

 

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