30連勝を目指す藤井聡太四段と総合格闘家・ヒョードルを比較

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この記事は、藤井聡太四段が公式戦30連勝を懸けて佐々木勇気五段と対局する直前に書かれたものです。記事本文の内容も、その状況を色濃く反映していますが、今でも楽しんでお読みいただけると思います。よろしければ、是非どうぞ!

 

 

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ごあいさつ (2017年7月2日執筆)

 

プロ公式戦29連勝中の藤井四段が、いよいよ今日7月2日に、30連勝をかけた、佐々木勇気五段との竜王戦本戦トーナメントの対局に挑みます!

 

 

それにしても、勝負の世界において、29連勝するというのは、凄いことですよね。

 

藤井四段はデビュー以来公式戦で29戦無敗ということになるわけなのですが、将棋以外の競技の世界にも目を向けてみたところ、ある伝説的な人物が藤井四段と同じ29戦無敗という記録を保持していることが分かりました。

 

 

その人物の名は、なんとあのエメリヤーエンコ・ヒョードルです!

 

ヒョードル選手は、総合格闘技界で最強と呼ばれ続けた人物で、「氷の皇帝」や「人類60億分の1」などの、恐ろしげな異名をもつことでも知られます。

 

 

総合格闘家・ヒョードル選手の記録について

 

はじめに、ヒョードル選手の総合格闘技における記録について簡単に紹介しましょう。

 

総合格闘とは?将棋との共通点

 

その前に、「そもそも総合格闘技って何?」という人のために軽く説明を。

 

 

総合格闘技とは、一言でいうと、「何でもあり」の格闘技です。

 

格闘技では普通、ボクシングならパンチだけ、柔道なら投げ技と寝技だけ、というように、使っていい技が限定されています。

 

これに対して総合格闘技は、「異種格闘技戦」つまり互いに別の格闘技の技を身に付けた者同士が戦ってどちらが強いかを決めることができるように、格闘技のあらゆる技が使えるようなルールになっています。

 

立って戦うときは「立ち技」、つまりボクシングや、空手、キックボクシングやムエタイなどの打撃系の技での戦いがメインになります。

 

地面に倒れてもダウンをとられることなく、戦いが続きます。

互いに地面に寝た状態での戦いに移ることを、「グラウンドに移行する」などといいます。

 

 

グラウンドでの戦いでは、打撃技と間接技の両方が使われます。

 

立ち技系の格闘技出身の人が、グランドに移行したら急に力が発揮できず、寝技の得意な選手に逆転されてしまうことがあったりします。

 

逆に、レスリングや柔道の技術があっても、グラウンドにもっていくために相手を倒す、専門的にいうと「テイクダウン」することができずに打撃が得意な選手、いわゆる「ストライカー」相手に苦戦することもあります。

 

つまり総合格闘技で勝つためには、単純に一つの技術のみに優れていても駄目なわけですね。

 

 

選手たちは日々、自分の出身の格闘技以外の総合ならではの技術の習得に励みます。

 

実に様々な技術があり、様々な状況があり得るので、事前にどのような勝負の展開になるのかを予想することも難しく、奥が深い格闘技であるといってよいでしょう。

 

 

 

こうして色々書いてみると、総合格闘技には、将棋と色々な共通点があるような気がしてきませんか?

 

まず、ひとくちに将棋の技術といっても様々なものがありますね。

 

終盤戦で相手を確実に詰ますための技術もあれば、序盤や中盤で有利になるための戦術などもあります。

 

そして将棋では、最初から最後まで研究通りに進むわけではなく、どこかで必ず想定外の局面が出てきます。

 

そのため、自分にとって未知の局面になったときに如何に対応するかが問われるわけです。

 

総合格闘技でも、有利になったときに最後まで勝ちきる能力、セオリー通りに戦う技術、ピンチになったときの対応力など様々な能力が重要になってきます。

 

ヒョードル選手というのは、そういう一筋縄でいかない世界で、強い選手たちに勝ちまくって「最強」とか「皇帝」、「人類60億分の1」と呼ばれるまでになった凄い選手なのです。

 

相手の打撃を受けてふらつく場面もありましたが、それでも勝利を収めたこともあります。

そうした危うい場面から勝ちにもっていけるところも、最強の最強たる所以なのでしょう。

 

 

同様に藤井四段も、将棋という奥深い勝負の世界で連勝を続けてきました。

 

29戦の中には、相手の研究範囲内の局面での戦いもありました。また、あと一歩で負けていた将棋もありました。

苦しい場面を懸命に戦うことで勝利を引き寄せてきた、そういうところに藤井四段の強さがあります。

 

藤井四段は人類60億分の1を超えた?ヒョードル選手の無敗記録

 

ヒョードル選手は2000年の5月にデビューしてから4連勝の後1敗したものの、その後の2001年4月の試合に勝利し、2009年11月の試合までの29試合のうち、ノーコンテスト(無効試合)となった1試合を除く28試合で勝利しています。

 

仮に藤井四段の1回目の澤田戦での千日手をノーコンテスト扱いすると、2回目の澤田戦での勝利の時点(世間でいうところの28連勝目の時点)で、ヒョードル選手と同じ記録になるわけですね!

 

 

増田四段と竜王戦に勝利した今、藤井四段は人類60億分の1、ヒョードル選手をある意味ではすでに超えていると言えます。

実際、史上最強棋士といわれる羽生先生にも勝利しているわけですし、藤井四段はとんでもない大物ですね^^

 

藤井四段とヒョードル選手の共通点

 

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藤井四段とヒョードル選手には記録以外にも共通点があります。

 

藤井四段は詰将棋・ヒョードル選手は柔道・サンボが得意

 

さて、様々な技術が必要になる将棋と総合格闘技ですが、やはり一つの技術が優れていれば、強みになることは間違いありません。

 

藤井四段の場合は、詰将棋を解くも創るのも得意で、解く方については詰将棋解答選手権で優勝していることから、全棋士でもトップレベルの能力があると言って間違いないでしょう。

 

これまでの29戦では、終盤力をみせるまでもなく勝った将棋が続いたこともあったそうですが、ここ一番では終盤の実力がものをいっていることは間違いありません。

 

ヒョードル選手の場合は、技術的なバックグランドとして、柔道とサンボがあります。

 

 

実は、ヒョードル選手はもと柔道の選手なのです。

もう一つのサンボというのは、専門的なことは分かりませんが、ロシアで生まれた柔道やレスリングのような格闘技です。

 

ヒョードル選手は、コンバットサンボの世界大会で4回優勝したことがあります。世界チャンピオンですね。

 

 

総合格闘技では、柔道・サンボのバックグランドは、簡単にはテイクダウンできない腰の強さとして現れています。

 

 

このように、一つの技術が一流、あるいは超一流に優れているというところに、藤井四段とヒョードル選手の共通点があります。

 

藤井四段は詰将棋チャンピオンに、ヒョードル選手は柔道メダリストに勝利

 

藤井四段は、「炎の七番勝負」で、もう一人の詰将棋選手権大会連覇経験者である、斎藤慎太郎七段と対局し、勝利しました。

 

どちらも詰将棋に裏付けられた優れた終盤力をもっているわけですから、勝つためには序盤や中盤で有利になっておく必要がありそうです。

 

実際、藤井四段は斎藤戦では、序盤で銀を相手にとらせる妙手で優位に立っています。

終盤力以外にも、藤井四段に強みがあることがはっきりと示された一局でしたね^^

 

 

ヒョードル選手も、自分と同様なバックグラウンドを持つ相手に勝利しています。

 

柔道のオリンピック金メダリストである、 小川直也選手と石井慧選手にも勝利しています。

 

ヒョードル選手はその他にも、立ち技の競技であるK-1でチャンピオンになったこともあるマーク・ハント選手、のちにK-1チャンピオンになるミルコ・クロコップ選手にも勝利しています。

 

様々なタイプのチャンピオンクラスの一流選手にも勝ってしまうところが、ヒョードル選手の恐ろしいところですね^^

 

藤井四段も、すでに色々なタイプの棋士と戦ってきたと思いますが、例えば将棋ソフトを使った研究で有名な千田六段に勝利したことは、ヒョードル選手の場合のミルコ選手への勝利と同じくらい大きな価値があるかも知れません^^

 

これからも藤井四段には、様々な棋士との対局が待っていて、その一局一局の中で真価が問われていくのでしょうね。

 

藤井四段がどこまで登っていくか、非常に楽しみですね!

 

藤井四段は三段時代に詰将棋創作封印、ヒョードル選手はサンボ大会出場辞退

 

最後はおまけみたいなものです(笑)。

 

前回の藤井-増田の竜王戦のニコ生の解説者の谷川浩司先生がおっしゃっていたように、谷川先生からのアドバイスにより、藤井四段は奨励会時代に、詰将棋の創作を封印していたのでした。

プロ棋士になるという、当面の間の目標を一番に優先したわけですね。

 

 

プロデビューを果たした藤井四段の詰将棋創作は、めでたく解禁されたわけで、早速(?)藤井四段が知事に出題した詰将棋とやらが話題になっていましたね^^

 

個人的な感想は、あんな難解なものをよく創れるな、という感じです(笑)。

 

 

 

それはともかく、何が優先すべき課題であるかを理解し、それに向かって全力で努力する姿勢は、まさに一流のやり方といえそうです。

 

 

実はヒョードル選手も、総合格闘技の試合を一番に優先して、サンボの大会を辞退したことがあります。

 

2015年の11月25日にモナコで行われるサンボ大会に参加表明していたものの、2015年の12月31日に総合格闘技の試合に出ることが決まったため、選手としての出場は辞退しました。

 

この大晦日の試合はヒョードル選手の復帰戦であり、テレビで放送されました。

相変わらずの圧倒的な実力で勝利した姿が印象的でした。

 

サンボ大会に出なかったのは多分、ヒョードル選手が最強と言われ、伝説となっているのは総合格闘技の世界であるため、そちらを優先したのでしょう。

 

総合格闘技の試合の直前にサンボの大会に出て万が一怪我でもしてしまったら、総合格闘技の試合の方に出られなくなってしまう。

出られたとしても、ベストなコンディションで出場できなければ、「人類60億分の1」としての責務を果たせなくなってしまう。

 

そういうリスクを避け、総合格闘技の復帰戦に最善をつくそうとしたわけですね。

 

優先順位を自分で決め、決めたゴールに全力で向かっていく、このあたりも藤井四段と共通していますね^^

 

まとめ

 

今回は、藤井四段と同じ9戦無敗という記録を持つ総合格闘家、エメリヤーエンコ・ヒョードルと藤井四段の共通点を挙げてみました。

 

ヒョードル選手と藤井四段、どちらも歴史的な記録を樹立しておりますが、ヒョードル選手と藤井四段には、一流としての共通点が色々とあります。

 

 

本文では共通点についてしか書かなかったのですが、この2人には、相違点もあります。

 

 

ヒョードル選手の29戦無敗が約10年間かけてつくられた記録であるのに対して、藤井四段の記録はわずか半年程度でつくられました。

 

また、藤井四段はデビュー戦から29連勝しているわけですが、ヒョードル選手はデビュー5戦目で負けています。

 

 

そしてもしも今日、藤井四段が勝利すれば、30連勝という記録となり、ヒョードル選手の29戦無敗の記録を超えることとなります。

 

さあ、藤井四段の30連勝は実現するのでしょうか?

どうなるかは分かりませんが、今日の結果出るのが楽しみですね。

 

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