【当サイトの記事はPRを含む場合があります。】
前回は、佐々木大地四段の師匠で、今度藤井聡太四段との対局が放送される深浦康市九段について書きました。
(この記事は「炎の7番勝負」の藤井-深浦戦放送前の記事に書かれました。)
前回の記事では、実績などから考えて深浦九段の非常に実力ある棋士であることはお分かりいただけたと思います。
強い棋士として活躍していること以外にも、深浦先生には魅力があります。
もちろん棋士の先生達は魅力的な人ばかりなのですが、深浦先生ならではの良さ、というものがあると思っています。
他の棋士同様、人当たりの良い親切な印象なのですが、身にまとう雰囲気に、厳しさのようなものを感じる、それがとても味があるのです。
今回は、過去の将棋世界誌で、ある連載記事に書かれた、深浦先生の将棋に対する姿勢についての話から、将棋棋士・深浦康市の持つオーラの秘密に迫ります。
目次(もくじ)
その連載記事とは、2002年頃に将棋世界に連載されていたコーナー、「夢にかける瞬間」というものです。
まずはその説明から始めますね^^
この連載は、当時旬を迎えていた棋士、例えばプロのトーナメント戦で活躍したり勝率が高かったり、新しい定跡を開発したりして注目を集めた棋士にスポットライトを当てるものです。
書かれている内容は棋士によって様々なようですが、書き手がその棋士にインタビューした結果に基づいたものとなっています。
そのため、将棋ファンでも中々知ることのできない、棋士の本音や強さ・活躍の秘密が分かったりします。
この連載では、本文の後ろには、取り上げられた棋士のプロフィールが載っていました。
生年月日や、奨励会入会や昇段や棋戦優勝などの時期、それに通算勝率なども書かれています。
それら以上に嬉しいのは、棋士の趣味や好きな言葉も記載されていることです。
将棋ファンにとって棋士は雲の上の存在でありますが、趣味などを知ると身近に感じられますよね^^
カラーページに掲載されたこの連載は、棋士の顔写真付きなのですが、それだけでなく棋士のお気に入りアイテムの写真も掲載されていました。
愛用の腕時計やネクタイピンなど、大切な私物の写真を公開してくれる、素晴らしい企画でした。
それでは本題です。今回紹介したいのは、2002年第5回の内容です。
深浦先生の少年時代の話から始まります。
ある日、プロ棋士という職業の存在を知った深浦少年は、プロになる決心をしました。
深浦少年は毎日、広告チラシの裏にその日のうちに勉強することを書いて、それを全て実行するというタスクを自分に課しました。
勉強の内容は、「詰将棋を10題解く、棋譜を3局並べる」というようなものだったそうです。
詰将棋を解く、棋譜を並べる。
読者の皆さんもやったことがあればお分かりになるでしょうけれど、これって結構頭が疲れる作業ですよね。
どのくらいのレベルでやるかによりますけれど、例えば棋譜並べは指し手の意味を考えらながらやると、いくらでも時間がかかってしまいます。
この頃の深浦少年は小学生でした。
きっと学校の宿題がたくさん出されることもあったでしょうし、そうでなくても毎日続けるのは大変なことです。
私もこのブログは毎日続けようとしているのですが、投稿できない日もあります(笑)
小学生の時点でそういう決意ができるだけでも凄いことなのですが、実際に実行しつづけるというのがまた凄いですね!
「夢にかける瞬間」には、深浦七段(当時)は、プロになってからもこの勉強法を続けている、と書かれています。
この勉強法とはもちろん、一日にやることを決めて、その日のうちにこなす勉強のことで、具体的な勉強内容は少年時代よりもはるかに高度です。
少年時代のころのように、自分にかなりの負荷をかける勉強を続けているわけですね。
これはかなり大変なことだと想像されます。
実際、さすがの深浦先生でも、さぼってしまうことが「しょっちゅう」であるとのことでした。
ところが、深浦先生の凄いところはここからです。
さぼってしまった分の勉強は、次の日に「何がなんでも」消化するところです。
まさに「強靭な精神力」のなせる業ですね。
深浦流の勉強姿勢は私たち一般の将棋ファンにも大変参考になると思いますので、是非読者の皆さんも実践してみましょう^^
このやり方はどんなことにでも通用すると思いますので、将棋に限らず一つの道を極めたい方には、おすすめしたいです。
このやり方で何かのプロを目指す方のために、もう一点だけ。
少年時代の夢を実現してプロとなった深浦七段(当時)がこの勉強法を実践して行く上での悩みは、「どうすればより自分が飛躍できるか」にあるのだそうです。
皆さんも、自身が極めようとする道の中で、その答えを探していって下さい。
ここでは、プロ棋士にとって飛躍のための勉強法を見つけるのが難しい理由を少し考察するにとどめておきましょう。
プロになってしまうと、基本的なことはすでに身についているわけで、実際の対局で勝負を分けるものが何であるのかは、分からないわけですね。
自分の力や知識が足りないうちは、単純にそれらを向上していければ勝率アップにつながるわけですけれど、あるところまでいきついてしまうと、飽和してくるのだと思います。
それ以上先を目指して膨大な知識を得ようとしたり、読みの力を鍛えようとしても、人間の脳の限界を越えてしまい、とても到達できない。
だから、単純に知識や読みの力で勝負するのでなく、何か別の要素が必要になるのだと思います。
それが、人間特有の能力「直観」です。
でも直観といわれても、よくわかりませんよね?
どうやって鍛えるの、という感じですよね。
まさにそれが、「プロ棋士の飛躍のための勉強法探し」が難しい理由なのだと思います。
直観とは何か、どうやって鍛えるのか、どうしてそれが勝負を分けるのか?
このように、考えだしたらきりがないのですから!
愛用アイテムの写真ところには、手帳の写真が載せられていました。
これは、少年時代の広告チラシに近い役割を果たしています。
ただし書くのは、何をすればよいかに関してのアイデアです。上記の私の考察が正しければ、直観を鍛えるためのアイデアが書かれているはずです^^
深浦先生の好きな言葉は、だそうです。
なんというかこういう、緩まない感じ「英断」がこの先生らしいと感じます^^
さて、以上で深浦先生のことがよりよくお分かりになったと思います。
ここでようやく、冒頭で書いた、深浦康一現九段の持つ、優しさの中に垣間みられる厳しいオーラの正体が掴めてきそうな気がしませんか?
自分で自分のすべきことを決め、一度決めたノルマは何がなんでもこなすことを継続的に実行してきた自律心と精神力。
きっとその決心や覚悟が、普段の振る舞いにもにじみ出ているのでしょうね。
深浦康市九段の強さや魅力の秘密について、過去の雑誌記事にヒントを得て考察してみました。
深浦流の、目標を実現するための計画・継続ができる自律心や意志力には頭が下がります。
今回、私独自の考察として、プロは直観を鍛える勉強を行ている、ということを主張してみました。
この将棋における「直観」という観点からの記事も、機会があれば執筆してみたいです。