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2018年、将棋連盟が、棋士の昇段に関する規定の改定を発表しました。
「八段昇段に関する規定の一部変更」という内容でした。
そして報道の通り、この改定により改定前よりも、2018年度中の「藤井聡太八段誕生」の可能性が高まりました。
でも、プロ将棋に詳しくないと、どういうことなのか、色々わかりにくいかもしれませんね。
ここでは、将棋ファンでない方や、ファンになりたての方にもなるべく簡単に理解できるような説明を試みます^^
ただしここでの説明は主として、特に藤井七段のケースに限らない一般論にとどめておきます。藤井七段については、あくまで一例としてとりあげます。
これには、2019年度以降もこの記事をみなさんに読んで欲しいから、という理由もあります(笑)。
目次(もくじ)
2018年の昇段制度の変更においては、八段昇段のための条件が新たに一つ付け加えられました。
改定の理由は、「八段以外の段位の昇段規定との整合性を保つため」とされています。
実際、従来の規定では、八段の規定だけ他の段位のものより少し昇段条件が少ない感じでした。
今回の改定により、昇段規定がきれいな体系をなすようになった印象です。
改定の理由はともかくとして、今度のルール変更が将棋界にもたらす影響を考えてみたいですよね。
というわけで、まずは変更の中身をおさえるために旧規定と新規定の違いをみて、改定の意味を理解していきたいと思います。
旧ルールでは八段昇段のためのルートがかなり限られていました。
現実的に考えると、旧制度は、八段になるまでにかなり時間のかかるルールでした。
たとえトップレベルの実力ある棋士でも、です。若手トップ棋士にとって不利な規定、といえそうです。
さてでは、まずは、この旧制度における八段昇段の大変さをおさえておきましょう。
これまでのルールでは、八段に昇段するためには、次の条件のどれかを満たす必要がありました。
これらのうち、七段昇段後190勝という勝ち数規定とA級昇級による八段昇段は、どんなに強い棋士でもルール上時間のかかるものです。
将棋の年間対局数は、2017年度最多対局の藤井聡太六段(当時)でさえ、73、そのうち勝ち数は61です。
(ここでは、藤井聡太・現七段の段位は、201年度の最高段位である六段で表記しておきました。)
つまり、どんなにたくさん勝てる棋士でも、190勝するためには3年以上は確実にかかるのです。
普通は2017年度の藤井太六段(当時)ほど勝つことはまれで、190勝には、5、6年かそれ以上とみるべきでしょう。
そして、順位戦での昇級は年に1回しかできないし、最速でA級棋士になれたとしても、デビュー5年目になります。
一方、竜王奪取による八段昇段であれば、ルール上はデビュー1年目の棋士でも可能です。
けれど、竜王獲得による八段昇段も、現実的に考えると、デビュー間もない棋士には困難です。
竜王戦のランキング(組)が低いほど、竜王挑戦者決定トーナメントで不利だからです。
デビュー後年数の経っていない棋士は下の方の組に所属してます。地道に組を昇級していくことが、竜王挑戦への一番現実的な道です。
もっとも、制度変更がなくても、藤井七段には2018年度内の竜王奪取による八段昇段を期待するファンは当然いて、確かに藤井七段ならばあるいは、という気はします。
おっと、八段昇段のスピード実現は非常に難しい、という話でしたね。
特に現状では、羽生世代の壁がまだ厚い上に、若手世代の層も厚く競争が激しいです。
すべての棋戦でトップ争いに入るのは、まさに至難の業、という状況になっています。
必然、今の若手世代は、将棋界でたとえトップクラスの才能や実力があったとしても、活躍できるのは一部の棋戦に限られてしまう、のです。
そう考えると、豊島八段の活躍は尋常でないですね。
こういう理由で、若くして「新八段」になる棋士がかなり限られてきたという現状があるわけですね。
これに対して、七段までのスピード昇段であれば、若手でも実力ある棋士には十分にチャンスがあり、実際に成し遂げた棋士も結構たくさんいます。
八段と違って、七段昇段には意外と色々な道があるのです。
2017年、2018年ごろ七段昇段した若手棋士を何名か挙げ、昇段理由を比べてみましょう。
棋士 | 現在の段位 | 年齢 | タイトル | 昇段理由 |
斎藤慎太郎 | 七段 | 25 | – | 順位戦B級1組への昇級 |
菅井竜也 | 七段 | 26 | 王位 | タイトル1期獲得 |
中村太地 | 七段 | 29 | 王座 | タイトル1期獲得 |
藤井聡太 | 七段 | 15 | – | 竜王戦ランキング戦連続昇級 |
順位戦、王座戦、竜王戦、とそれぞれ別な舞台で好成績を出した結果の昇段になります。
若手の実力ある棋士たちが、それぞれの得意な舞台で活躍した結果、七段昇段を決めたわけです。
ちなみにこの表には、順位戦に強い棋士がいます。斎藤七段もそうですが、菅井王位も順位戦はB級1組にいます。
このお二人なら、近いうちにA級昇級による八段昇段の可能性も十分にありますね。
その一方で、永瀬七段のような、他棋戦でトップ争いをしているにも関わらず、順位戦ではまだA級が遠い棋士もいます。
昇段理由は上記の他にもあって、「デビュー1年目で七段」を可能にする、「竜王挑戦による七段昇段」というルールも存在します。
もっとも、新四段がこのルールによって七段昇段するのは竜王戦の仕組み上相当大変ですが。
また、藤井七段のように、他の棋戦で六段昇段をしておけば、「竜王戦ランキング戦連続昇級」によってデビュー2年目での七段昇段も可能です。
もちろん、これら以外にも、勝ち数規定による七段昇段の条件もあります。
ともかく、七段には色々なルートが存在し、それは六段以下も同じです。
それなのに、旧規定では、八段昇段からがいきなり大変になる、というわけでした。
若手棋士で七段が結構いる、と書きはしましたが、現状では少ない方ではあります。
しかし、今後有望な若手たちが次々と達成していくと思います。
そして、彼らの中から、タイトルホルダーになる棋士もでてくる可能性も高いです。
でも、そうなったときに、従来の規定のままだったら、どういうことになるでしょうか?
2連覇とか2冠など、タイトル戦で活躍するものの、順位戦では振るわずA級棋士になれなかったり、竜王位を奪取できなかったりするかもしれません。
そうなってしまえば、どんなに強くても七段のまま、という事態が生じてしまいます。
もちろん、勝ち数規定での昇段はありますので、いつかは八段になれますが、時間がかかります。しばらくは実力よりも低い段位をもつことになってしまいます。
タイトルをもっているうちはいいけれど、失冠した途端に七段になってしまい、そのために落胆する、みたいなこともありえます。
今度の八段昇段ルール改定によって、そのような事態は回避されることになります。
今回の改定によって、実力ある若手棋士が八段にスピード昇段できる可能性が、改定以前よりは高まり、十分現実的になりました。
実際、改定により2018年度中に八段昇段する可能性が高まった棋士たちがいます。
それではいよいよ、どのような改定なのかをみてみましょう。
今度の改定では、八段昇段の条件として、次のようなものが付け加えられました。
これだけです(笑)。シンプルですね!
でもこの規定により、八段昇段が現実的になってきた棋士がいます。
さきほど若手の七段昇段の例として挙げた、菅井王位、中村王座は、それぞれのタイトルを防衛すれば、八段昇段できます。
叡王戦で戦っている、高見六段、金井六段も忘れてはいけませんね^^
藤井七段のケースでいうと、竜王戦で残っているので、竜王1期による2018年度内の八段昇段が期待されていました。
それに加え、藤井七段が現在勝ち残っているタイトル棋戦で、2018年度に番勝負開催のもの、すなわち王座戦・棋王戦、の両方でタイトル奪取ができれば、2018年度に八段昇段できる、というもう一つの可能性がでてきたわけです。
ともかく、今回の条件追加によって、八段昇段する若手が今後増えていく可能性があり、将棋界がますます盛り上がっていきそうな予感がします!
また、順位戦で長年A級までとどかないベテランや中堅棋士のモチベーションアップにもつながると思うので、是非彼らにも頑張って欲しいです!。
ちなみに、九段昇段の条件に、「タイトル3期で九段」があります。
ただ、旧制度において、九段への昇段に、「八段昇段後」という条件が必要だったのかどうか、ちょっと謎なところがあります。
八段を飛ばしてもいいのであれば、通算3期タイトルをとれれば、九段に昇段できることになりますが。
ずっと以前の将棋界では、昇段は年に1度まで、という規定かあったくらいです。
でも、最近では昇段は年に何回でもできます。
ただ、一気に2段以上昇段する「飛びつき昇段」に関しては、前例がなさそうですので、認められているのかどうか、わかりません。
どちらにせよ、今回の八段昇段のルール改定によって、「九段昇段」の条件達成の前に必ず「八段昇段」の条件をクリアすることになるので、九段昇段に関しては「飛びつき昇段の可能性」がなくなり、曖昧さのないすっきりしたルールになりました。
現時点で「飛びつき」の可能性があるのは、「七段」ですね。
強四段がいきなりタイトル挑戦した場合、「五段」になります。
タイトルを立った場合、五段から六段を経ずに七段に昇段するのかどうか、今後また彗星のような若手がでてきたときにはっきり明文化されるのでしょうか^^
いかがでしたか?
今回は、2018年の八段昇段規定の追加について書いてみました。
従来のルールでは、八段になる方法がかなり限定的であり、そのために、タイトル2期の経験者であっても、防衛に失敗した途端に、実力よりも低い段位、七段を名乗らなければならなくなる可能性があったことを説明しました。
また、九段昇段の条件に曖昧さがなくなった点についても、書きました。
こちらも、将棋ファンなら気になっていたことだと思いますが、いかがでしょうか?
個人的には、ちょっとすっきりした気分です(笑)。
4段と7段は大分重みが違います。
9段は最上位ですから名誉と思います。
A級はB1と違い名人戦に挑戦できる可能性のある一番強いグループです。
7段と8段はどちらでも良い、こだわる必要はない。
8段ならではの特典はあるのでしょうか。
(8段は9段への通過点で何時昇段しても良いのでは)
藤井くんへの忖度改革でしょうかね(^^)/しかし別に段位なんてそんなに気にすることないですよ。それに藤井くんの7段だって、かなりラッキーな昇段ですよ。日程的に恵まれただけですからね。順位戦で昇段する前に棋戦優勝してれば6段昇段はなかったわけですkらね。たった2週間の差です